アトラス (ロケット)

アトラスロケット

アトラスロケットは、アメリカ合衆国で開発された使い捨て型大型ロケットです。その歴史は、大陸間弾道ミサイル（ICBM）として開発されたアトラスに始まり、時代とともに進化を続け、様々な用途に対応するようになりました。アトラスシリーズは、大きく分けて以下の4つのシリーズに分類されます。

アトラスI: アトラスICBMを基に改良された初期モデル
アトラスII: チャレンジャー事故後の衛星打ち上げ能力回復のために開発されたモデル
アトラスIII: メインエンジンにロシア製のRD-180を採用したモデル
アトラスV: コモン・コア・ブースターを採用し、現代的な設計となったモデル

以下に各シリーズの詳細を解説します。

アトラスI

アトラスIは、元々アメリカ空軍向けに開発されたICBMであり、1959年から実戦配備されました。しかし、液体酸素を酸化剤として使用していたため、即応性に劣り、より即応性の高いタイタンIIやミニットマンIの配備に伴い、1960年代に退役しました。機体構造は、ステンレス製の薄い外殻で内圧を保持する方式を採用し、打ち上げ時には3基のメインエンジンを使用する独特の1.5段式ロケットでした。この技術はイギリスにも導入が試みられましたが、技術的な困難さから実現には至りませんでした。

アトラスはその後、人工衛星打ち上げ用ロケットとしても発展し、NASAのマーキュリー計画では、有人宇宙船を搭載したアトラスLV-3Bが使用されました。また、上段を追加したアトラス・アジェナやアトラス・セントールも開発されました。

アトラスII

アトラスIIは、アトラスICBMを改良した最終モデルであり、低軌道、静止トランスファー軌道、静止軌道への投入を目的として設計されました。アトラスII（IIA、IIASを含む）は、1988年からデルタ[[ロケット]]に置き換えられる2004年までに63機が打ち上げられました。アトラスIIでは、各段でより強力なエンジンと拡張された燃料タンクを使用することで、ペイロード打ち上げ能力が向上しました。静止軌道へは、2767 kg以上のペイロードを投入することが可能でした。また、上段には液酸液水ロケットエンジンであるセントールロケットを使用し、ペイロードをさらに増加させています。

アトラスIIの特徴としては、低コスト化された電子機器、優れた飛行制御コンピュータ、延長された燃料タンクなどが挙げられます。

背景

アトラスは元々ICBMとして開発されましたが、アメリカ空軍がアトラスICBMをタイタンICBMに置き換えたため、余剰となったアトラスICBMは打ち上げロケットとして再利用されることになりました。NASAは、1958年には早くもアトラスを打ち上げロケットとして利用しています。

発射場

アトラスIIは、主にケープカナベラル空軍基地の45番発射台から打ち上げられました。また、西海岸からはヴァンデンバーグ空軍基地の30番発射台から打ち上げられました。

各種情報

主契約企業: ロッキード・マーティン
エンジン: MA-5A（ロケットダイン）×3、RL10A-4（プラット＆ホイットニー）セントールエンジン×2
第0段推力: 2200 kN
全長/全幅: 47.54 m / 4.87 m
コア直径: 3.04 m
離床重量: 204.3 t
初打ち上げ: 1992年2月10日

アトラスIII

アトラスIIIは、2000年から2005年にかけて使用されたアメリカの軌道打ち上げ用ロケットです。アトラスIIIAとアトラスIIIBの2つのバージョンがあり、それぞれ特徴が異なります。

アトラスIIIA

アトラスIIIAは、アトラスIIAまでのロケットダインMA-5ブースターの代わりに、ロシア製のRD-180エンジンを使用しています。第一段にはバルーンタンクとRD-180エンジンを組み合わせ、打ち上げ時には推力を調整することで輸送能力を最大限に高めています。第二段にはセントールロケットを使用しています。打ち上げ回数は少なく、2002年と2004年の2回のみでした。

アトラスIIIB

アトラスIIIBは、アトラスIIIAの第2段目を延長し、エンジンを2基に換装したモデルです。第一段はアトラスIIIAと同じものを使用し、第二段のセントールロケットはターボポンプ加給の2基のプラット＆ホイットニーRL10A-4-2エンジンを搭載しています。アトラスVに取って代わられるまでの短い期間運用されました。

各種情報

アトラスIIIA

主契約企業: NPO エネゴマシュ/プラット＆ホイットニー
低軌道ペイロード: 8,640 kg
静止トランスファー軌道ペイロード: 4,055 kg
離陸推力: 2,600 kN
総重量: 214,338 kg
全長: 52.80 m
打ち上げ費用: 1億500万ドル（1999年時点）

アトラスIIIB

主契約企業: NPO エネゴマシュ/プラット＆ホイットニー
低軌道ペイロード: 10,718 kg
静止トランスファー軌道ペイロード: 4,500 kg
離陸推力: 2,600 kN
総重量: 218,588 kg
全長: 52.80 m
打ち上げ費用: 1億500万ドル（2000年時点）

アトラスV

アトラスVは、ロッキード・マーティンによって開発された最新のアトラスロケットです。過去のアトラスロケットとは設計が大きく異なり、バルーンタンクや1.5段式構造は採用されていません。アトラスVの第一段は、タイタンシリーズのような強固な構造を持ち、コモン・コア・ブースター（CCB）と呼ばれる大型のブースターを使用しています。CCBには、ロシア製のRD-180エンジンが搭載されています。

アトラスVは、アメリカ空軍のEELV計画の一環として開発され、ケープカナベラル空軍基地の41番射場から打ち上げられています。また、将来の極軌道衛星用としてヴァンデンバーグ空軍基地も用意されています。

アトラスVの第二段には、セントールロケットを使用しており、1基または2基のプラット＆ホイットニー製RL10A-4-2エンジンを搭載しています。セントールロケットは、再着火が可能であり、様々な軌道への衛星投入に対応できます。

アトラスVは、ペイロードフェアリングとして、従来の4メートルフェアリングに加えて、エリコン・コントラヴェス社製の5メートルフェアリングも使用できます。また、ペイロードの大きさに合わせて、アトラスV 400/500シリーズ、アトラスV Heavyの3つの構成をサポートしています。

型名

アトラスVの型名は、3桁の数字で構成されており、それぞれ以下の意味を持っています。

100の位：ノーズコーンフェアリングの直径（4 mまたは5 m）
10の位：第一段に取り付けられる固体ブースターの本数
1の位：セントールロケットに搭載されるエンジンの数

例えば、アトラスV 552は、5 mフェアリング、5本の固体ブースター、2つのセントールエンジンを使用していることを表します。

比較対象となるロケット

デルタ IV
アリアン5
長征5型
アンガラ
ファルコン9
GX[[ロケット]]

脚注

1. USAF Atlas II Fact Sheet

外部リンク

ILS公式サイト
Astronautix.com
アトラスIIASについての記事
Atlas-IIAS打ち上げとTerra衛星展開のアニメーション

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