アドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲート

アドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲートについて

アドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲート（Admiral Grigorovich-class frigate）は、ロシア海軍が運用するフリゲート艦の艦級です。正式には11356M型フリゲートと呼ばれます。この艦級は、黒海艦隊の戦力増強を目的として開発されました。

開発の背景

黒海艦隊は、ロシア帝国海軍時代から重要な役割を担っていましたが、ソビエト連邦崩壊後、主要基地であるセヴァストポリがウクライナ領となったため、艦艇の近代化にはウクライナの同意が必要でした。これにより、艦艇の老朽化が進んでいました。

2008年の南オセチア紛争では、NATO諸国の艦隊が黒海に進入し、ロシアは自国の安全保障に危機感を抱きました。また、2010年代には中東情勢の不安定化により、NATO艦艇の黒海展開が頻繁化しました。これらの状況に対応するため、ロシア海軍は黒海艦隊の更新を急務としました。

当時、ロシア海軍はアドミラル・ゴルシコフ級フリゲートの整備を進めていましたが、建造が遅れていました。そのため、既存の11356型フリゲート（タルワー級）を基にした設計で、アドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲートが開発されました。

設計

本級は、ヤンターリ造船所がインド海軍向けに建造した11356型フリゲートをベースにしています。船体の主要寸法は11356型とほぼ同じで、ステルス性を考慮した設計が採用されています。上部構造は、艦橋、煙突、ハンガーの3つのセクションに分かれています。

主機関は11356型と同じく、M7N1型COGAG機関が採用されました。これは、UGT-6000（巡航用）とUGT-16000（高速用）のガスタービンエンジンを組み合わせたものです。しかし、ウクライナ製の部品供給問題により、4番艦以降はM90FRガスタービンエンジンに換装されました。

装備

アドミラル・グリゴロヴィチ級は、多くの点で装備が刷新されています。

艦対空ミサイル・システム: シュチーリ-1が採用され、発射機はVLS化された3S90E.1に変更されました。近距離迎撃用の9M100ミサイルも発射可能です。
対地・対艦兵器: 8セルの3S14 UKSKが搭載され、カリブルNKおよびP-800ミサイルを発射できます。これにより、ロシアの大型水上戦闘艦艇として初めて、長距離対地火力投射能力を具備しました。
主砲: A-190 100mm単装速射砲がA-190-01に更新されました。
戦術情報処理装置: トレボヴァニェ-Mが搭載され、同時に256の目標を処理できます。シグマを搭載しているという説もあります。
* 無人機: オルラン10無人機を搭載し、レーダー外の目標を捕捉できます。カタパルトで発艦し、パラシュートで着艦します。

配備

当初は9隻の建造が予定されていましたが、2015年に6隻に変更されました。1番艦「アドミラル・グリゴロヴィチ」は、2016年3月に納入され、同年にシリア内戦に実戦投入されました。

4番艦以降は、ウクライナ製のエンジン供給問題により建造が遅れました。最終的に、国産エンジンへの換装やインドへの売却によって、計画の遅れが解消されました。

輸出

2010年頃から、インド海軍が本級の導入に関心を示していました。ウクライナ製エンジンの供給問題により、ロシア海軍向けの3隻がインドへ売却される計画も浮上しましたが、最終的には2隻がインドに売却され、残りの1隻はロシア海軍向けに完成しました。

インドに売却された2隻には、ブラモスミサイルの運用能力が付加される予定です。また、売却契約では、米ドルではなくインド・ルピーとロシア・ルーブル間の直接交換で支払いが行われ、アメリカの経済制裁を回避する試みが見られました。

まとめ

アドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲートは、黒海艦隊の戦力増強のために開発された重要な艦艇です。ウクライナ製のエンジン供給問題という困難を乗り越え、ロシア海軍とインド海軍の両方で運用されることになりました。先進的な兵装と情報処理能力を備えており、ロシア海軍の近代化に貢献しています。

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