アドリアノープルの戦い (1205年)

アドリアノープルの戦い（1205年）

アドリアノープルの戦いは、1205年4月14日に、第二次ブルガリア帝国の皇帝カロヤンと、ラテン帝国の皇帝ボードゥアン1世の間で起こった戦いです。この戦いは、ブルガリア帝国が勝利し、その後のラテン帝国の衰退に大きな影響を与えました。

背景

第4回十字軍は、当初の目的であったエルサレムへ向かうことができず、ヴェネツィアの総督エンリコ・ダンドロの提案により、ビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを占領しました。この結果、ラテン帝国が成立しましたが、その支配領域はコンスタンティノープル周辺とトラキア地方に限られていました。

一方、ブルガリア皇帝カロヤンは、教皇インノケンティウス3世との交渉を成功させ、皇帝として認められるとともに、ブルガリアの大司教は総主教の称号を取り戻しました。カロヤンとラテン帝国との関係は良好に見えましたが、ラテン帝国の騎士たちはブルガリアの土地を略奪するようになり、両者の関係は悪化しました。カロヤンは、トラキアのギリシャ人貴族と同盟を結び、ラテン帝国に対抗することにしました。

1205年の春、ディディモティホとアドリアノープルで反乱が起こり、トラキア全体に広がりました。ボードゥアン1世は軍を率いて北上し、3月末にはアドリアノープルに到着しました。

包囲

ラテン帝国軍は、アドリアノープルを正面から攻撃するのではなく、長期にわたる包囲を選択しました。城壁の下に地雷を掘るなどして防御力を低下させ、援軍を警戒しました。ヴェネツィア軍は特に活躍し、各門の前を固めました。1205年4月10日、カロヤンは軍を率いて到着し、街の北東約25キロメートルの地点に野営しました。

戦力

ブルガリア軍は約54,000人で、ヴラフ人やクマン人の軽騎兵を含んでいました。カロヤンはクマン人の王女と結婚しており、彼らは同盟軍または傭兵として参加しました。一方、ラテン帝国軍は、騎士約300人を含め、総勢4,000人以下でした。アドリアノープルには、東トラキアからのビザンチンの反乱軍も集結していましたが、その数は不明です。

戦闘の経過

1日目（4月13日）

カロヤンはクマン騎兵隊を偵察に送り込み、騎士たちに奇襲攻撃を仕掛けました。怒った騎士たちは反撃しましたが、騎兵隊はすぐに引き返し、騎士たちを誘い出しました。騎士たちはブルガリア軍の待ち伏せに気づき、攻撃に備えました。

2日目（4月14日）

カトリックのイースターの祝祭中、クマン人の軽騎兵が騎士たちのキャンプを襲撃しました。騎士たちは怒り、追撃を開始しましたが、これはブルガリア軍の罠でした。クマン人は騎士たちを「オオカミの穴」と呼ばれる落とし穴に誘導し、多くの騎士と馬が倒れました。ブルガリアの歩兵が待ち伏せ場所から現れ、騎士団を包囲しました。ボードゥアン1世が残りの騎士を率いて救援に駆けつけましたが、すでに手遅れでした。騎士たちは完全に包囲され、全滅しました。ボードゥアン1世自身も捕虜となり、ヴェリコ・タルノヴォに幽閉されました。

影響

ボードゥアン1世の終焉

捕虜となったボードゥアン1世は、その後の消息は不明となりました。獄中で死亡したと考えられていますが、その状況は不明です。カロヤンは教皇インノケンティウス3世とボードゥアン1世の裁判所に皇帝の死を報告しました。現在でも、ヴェリコ・タルノヴォのツァレヴェツ要塞には、「ボードゥアンの塔」と呼ばれる塔が残っています。

騎士の名誉とラテン帝国の崩壊

アドリアノープルの戦いでの騎士団の敗北は、ヨーロッパ中に衝撃を与えました。無敵を誇った騎士団の評判は失墜し、ラテン帝国は大きな打撃を受けました。この戦いからわずか1年後、ラテン帝国は崩壊へと向かいました。

ローマ人殺しカロヤン

アドリアノープルの戦いの後、カロヤンはラテンの都市や、彼に反抗するビザンチンの都市を焼き払いました。彼は自らを「ローマ人殺し」と称し、バシレイオス2世のブルガリアに対する残虐行為への復讐を果たしました。

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