アナウンスメント効果

アナウンスメント効果とは

アナウンスメント効果とは、選挙における事前予測、特に世論調査の結果などが、有権者の投票行動に影響を与える現象を指します。選挙戦において、メディアや各種機関が発表する支持率や当選予測が、単なる情報としてだけでなく、有権者の心理や行動を左右する力を持つという点が重要です。

この効果には、大きく分けて二つの側面が存在します。

バンドワゴン効果

一つ目は「バンドワゴン効果」です。これは、選挙戦で「有利」だと予測された候補者に対して、有権者が「勝ち馬に乗ろう」とする心理が働く現象です。つまり、支持率が高い、あるいは当選が確実視されている候補者に対して、特に政治的関心の低い有権者や、情勢に流されやすい層が「どうせなら勝つ方に」という心理で投票する傾向が強まります。この結果、予測以上の票が特定の候補者に集中し、雪崩のように支持が集まる現象が起こります。これが「なだれ現象」とも呼ばれるものです。

アンダードッグ効果

もう一つが「アンダードッグ効果」です。これは、逆に選挙戦で「苦戦している」と予測された候補者に対し、有権者が同情や危機感を抱き、その候補者を応援しようという心理が働く現象です。「このままでは負けてしまうかもしれない」という状況に、有権者が「何とかして応援したい」という感情を抱くことで、支持率が低いとされていた候補者でも、予想外の票を集めることがあります。特に、特定の候補者を応援していたわけではない層が、「負けそうだから応援しよう」という形で投票行動を起こすことがあります。

アナウンスメント効果の複雑性

アナウンスメント効果は、選挙結果を予測する上で非常に重要な要素ですが、その影響は一面的ではありません。バンドワゴン効果とアンダードッグ効果の両方が同時に働く可能性があるため、単純に「有利」と予測された候補者が必ず勝つとは限りません。また、これらの効果がどの程度現れるかは、選挙の種類、候補者の個性、有権者の属性、社会情勢など、様々な要因によって左右されます。

アナウンスメント効果への対策

選挙戦略においては、このアナウンスメント効果を理解し、どのように利用するか、あるいはどのように対策を講じるかが重要になります。例えば、苦戦していると報道された候補者は、アンダードッグ効果を狙って、危機感を煽るようなメッセージを発信したり、草の根運動を展開したりすることが考えられます。逆に、有利だと予測されている候補者は、慢心を避け、最後まで気を抜かない選挙活動が求められます。

関連事項

アナウンスメント効果は、戦略投票の一環として捉えられることもあります。戦略投票とは、有権者が自分の本来の支持候補ではなく、選挙結果に影響を与えることを意図して投票行動を行うことです。この点で、アナウンスメント効果は有権者の戦略的な行動に大きく影響を及ぼしていると考えられます。

まとめ

アナウンスメント効果は、選挙の予測を複雑にする要因の一つであり、有権者の投票行動に大きな影響を与える現象です。選挙を分析する際には、単なる支持率だけでなく、有権者の心理や行動パターンを理解することが必要です。この現象を理解することで、より精度の高い選挙分析や選挙戦略の立案が可能になります。

参考資料

宮島喬 編『社会学』岩波書店〈岩波小辞典〉、2003年10月。ISBN 4000802151。
『アナウンスメント効果』 - コトバンク

もう一度検索