アナドル (揚陸艦)

トルコ海軍の多目的強襲揚陸艦 TCG アナドル：その設計、能力、そして艦歴

トルコ海軍の強襲揚陸艦「TCG アナドル (L-400)」は、同国のアナトリア半島にちなんで名付けられた、多用途性を備えた画期的な艦艇です。スペイン海軍の「フアン・カルロス1世」をモデルに、スペインのナバンティア社による設計・技術支援を受けて建造されました。単なる揚陸艦の枠を超え、V/STOL機軽空母としての運用も可能であり、トルコ海軍の戦力と作戦能力を大幅に向上させる存在となっています。

設計と仕様

「アナドル」は全長231メートル、全幅32メートル、吃水6.8メートル、全高58メートルという堂々たるサイズを誇ります。排水量はミッション構成によって異なり、「軽空母」構成では24,660トン、「揚陸艦」構成では27,079トンになります。最高速度は「軽空母」構成で21.5ノット、「揚陸艦」構成で29ノットに達し、最大航続距離は9,000海里を予定しています。乗員数は士官、下士官、水兵合わせて261名です。ARAS-2023ダイバー探知ソナーも搭載し、高い安全性も確保されています。

航空運用能力

当初はヘリコプター専用と計画されていましたが、後にF-35B戦闘機の運用も考慮し、艦首にスキージャンプ台が設置されました。トルコは当初F-35Bの購入を予定していましたが、ロシアからのS-400ミサイルシステム購入により、米国からの輸出が阻止されたため、現在は国産のバイラクタルTB3などのUCAVを運用しています。

「アナドル」は最大10機のF-35B（将来購入した場合）と12機の中型ヘリコプターを運用可能です。5,440平方メートルの飛行甲板と990平方メートルの格納庫を備え、格納庫と軽貨物ガレージを併用することで、最大25機の中型ヘリコプター、あるいは10機のF-35Bと12機の中型ヘリコプターの搭載が可能です。飛行甲板にはさらに6機のヘリコプターを収容できます。また、AselsanとHavelsanによって統合されたトルコの戦闘管理システムGENESIS-ADVENTと、レオナルドSPN-720精密進入レーダーを搭載し、全天候での航空機の離着陸を支援します。

輸送揚陸能力

「アナドル」は、多様な物資や車両の輸送能力も備えています。1,880平方メートルの軽貨物ガレージには、TEUコンテナや27台の水陸両用攻撃車両（AAV）を収容できます。1,165平方メートルのドックには、機動揚陸艇（LCM）やエア・クッション型揚陸艇（LCAC）などを収容可能です。さらに、1,410平方メートルの重物料用ガレージには、29台の主力戦車（MBT）などを収容できます。

艦歴と建造

「アナドル」の建造計画は2013年に開始され、2016年4月30日にイスタンブールのSedef Shipbuilding Inc.で起工されました。2019年には小規模な火災が発生しましたが、すぐに消火され、建造は順調に進みました。2021年には海上公試を実施し、2023年4月10日に正式に就役しました。就役式典では、甲板上に複数のバイラクタルTB3が展示され、その運用能力の高さが示されました。2024年11月19日には、バイラクタルTB3の発着艦試験が成功裡に実施されています。建造費は当初3億7500万ユーロと見積もられていましたが、最終的には10億ドルに達したと推定されています。

将来

トルコ海軍は、「トラキア」という名前の姉妹艦の建造を計画しています。この姉妹艦の就役により、トルコ海軍の強襲揚陸能力はさらに強化される見込みです。

「アナドル」は、その多用途性と高い運用能力から、トルコ海軍の主力艦として、そして将来の海上の安全保障において重要な役割を果たすことが期待されています。

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