アハサー

アハサー地方：砂漠の中の緑豊かなオアシス

アハサー地方は、サウジアラビア東部州に位置する広大なオアシス地帯です。ペルシア湾に面し、ルブアルハーリー砂漠、ダハナー砂漠に囲まれたこの地域は、11万7,000平方キロメートルにも及ぶ広大な面積を誇ります。かつてはアハサー州として存在しましたが、周辺地域と統合され、現在の東部州となりました。

歴史

この地は、古代から水が豊富に得られるため、人々の生活が営まれてきました。特にナツメヤシの栽培が盛んで、オアシス農業の中心地として発展しました。アハサーは、歴史的には「アル＝バハライン」の一部として知られ、アラビア半島東海岸部の広大な地域を指す言葉でした。

899年にはカルマト派の支配下に入り、アッバース朝から独立を宣言。首都アル＝ムウミニーヤは、現在のフフーフ近郊に位置していました。1000年頃には、世界で9番目に人口が多い地域とされ、10万人が暮らしていたと推定されています。その後、ウユーニー朝、ウスフール朝、ジャブル首長国による支配が続き、16世紀にはオスマン帝国の支配下に入りましたが、17世紀にはバヌー・ハーリド部族が勢力を伸ばしました。18世紀末には、サウード家との戦いに敗れ、サウード王国の支配下に入ります。その後、オスマン帝国の侵攻や再独立を経て、19世紀には再びサウード王国の支配下に入りました。20世紀初頭には、ナジュド王国の一部として編入され、現在のサウジアラビアの一部となっています。

経済

アハサー地方は、古くから米（赤米）の栽培が可能な地域でした。1938年に近郊で石油が発見されてからは、急速に近代化が進み、石油の生産地として世界的に有名になりました。また、ナツメヤシの栽培も盛んで、オアシスには3000万本ものナツメヤシが植えられています。年間10万トン以上のナツメヤシが生産されています。

観光

アハサー地方には、60から70程度の天然の泉が存在し、古くからの遺跡も点在しています。これらの泉と遺跡は、この地域が古代から人々の生活を支えてきた証です。特に、豊富な水資源を利用した灌漑システムは、古代からの知恵を今に伝えています。

世界遺産

アハサー地方の文化的景観は、2018年にユネスコの世界遺産に登録されました。この文化的景観には、庭園、運河、泉、井戸、農業用排水の湖、山、洞窟、村落、モスクなどが含まれており、水管理システムと歴史的建造物が一体となった景観が特徴です。特に、250万本のナツメヤシが生い茂るオアシスの風景は圧巻です。この世界遺産は、以下の登録基準を満たしています。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
* (5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。

まとめ

アハサー地方は、砂漠地帯の中で貴重な水資源に恵まれたオアシスであり、古代から人々が生活を営んできた歴史的な場所です。その歴史と文化は、現在も世界遺産として保護されており、多くの人々を魅了しています。石油資源だけでなく、農業も盛んなこの地域は、今後も発展を続けることでしょう。アハサーは、まさに自然と人間が調和した、驚くべき場所なのです。

もう一度検索