アビアンカ航空011便墜落事故

アビアンカ航空011便墜落事故は、1983年11月27日未明、スペインのマドリード＝バラハス空港の南東約12キロメートル地点で発生した。この事故により、乗員乗客192名のうち181名が命を落とすという痛ましい結果となった。

事故の概要

アビアンカ航空011便（ボーイング747-283B、機体記号HK-2910）は、フランクフルトを出発し、パリ、マドリード、カラカスを経由してボゴタへ向かう国際定期便であった。事故当日、フランクフルト発パリ行きのフライトがキャンセルされ、その影響で出発が1時間20分遅れた。

マドリードへ向かう中、航空機はFL370まで上昇後、マドリードの管制と連絡を取り、Pamplona、Barahona、Castejonの各通過点を経由してマドリードVORへ向かう飛行許可を得た。その後、高度を段階的に下げ、最終的に滑走路33への進入許可を得た。通常、高度4,000フィートでCPL（VORの名称）直上を通過後、右旋回して滑走路進入コースに入る手順であった。

しかし、着陸許可を得た時点でCPLの6海里以上手前にいたにもかかわらず、パイロットは右旋回を開始し、高度を下げながらアウターマーカー付近で再び右旋回するというショートカットを試みた。この時、副操縦士は機長に対し、アウターマーカー通過高度を誤って2,382フィートと伝えた。機長もILSチャートを確認しなかった。マドリッド空港の高度は1,902フィートであるため、2,382フィートでは地表から約146メートルの高さしかなく、さらにアウターマーカー付近は小高い丘が点在する地形であった。

ILSグライドスロープを捉える際、パイロットは通常下側から入るため、2,382フィートよりもさらに低い高度で飛行することになった。

事故発生

墜落の14秒前、GPWS（対地接近警報）が作動したが、機長は「いいんだ、いいんだ」と述べ、対応を行わなかった。5秒後、再度「いいんだよ」と言いながら自動操縦を解除したが、高度を上げる操作はしなかった。警報が鳴り止まないことに気づいた副操縦士は「地表と言ってますが何の意味ですか、機長」と質問した。その1秒後、最初の衝撃音が記録された。

航空機は標高2,247フィートの丘に、速度142ノットで右主脚と第4エンジンが接触。その後、3秒後に別の丘に衝突し、最終的に地面に右翼から激突し、機体は五つに分断した。乗客169名のうち生存者は11名、乗員23名（デッドヘッド4名を含む）は全員死亡した。

事故原因

スペイン民間航空事故調査委員会（CIAIAC）の報告書によれば、事故原因は以下の通り。

機長が、正確な自機の位置を把握しないまま、計器進入操作を誤り、最低安全高度を下回る高度で飛行したこと。
不正確なナビゲーションにより、進入操作を開始した地点が誤っていたこと。
対地接近警報（GPWS）が作動したにもかかわらず、適切な対応をとらなかったこと。
操縦室内のチームワークが不足していたこと。
管制塔が航空機に対して不正確な位置情報を伝えたこと。
管制官は、レーダーサービスが終了したことを航空機に伝えなかったこと、またレーダーでの監視を怠ったこと。

これらの複合的な要因が重なり、アビアンカ航空011便の墜落という悲劇を引き起こした。

参考文献

『機長の真実』 デヴィッド・ビーティー / 小西進（訳）講談社 2002年 ISBN 4062111195
『事故調査報告書』 スペイン民間航空事故調査委員会 (CIAIAC)

関連項目

中国国際航空129便墜落事故
ガルーダ・インドネシア航空152便墜落事故

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