アフォントヴァ山遺跡

アフォントヴァ・ゴラ遺跡：シベリアの旧石器時代遺跡群

アフォントヴァ・ゴラ遺跡は、ロシアのクラスノヤルスク市近郊、イェニセイ川左岸に位置する、後期旧石器時代から中石器時代にかけてのシベリアの複合遺跡群です。1884年にイワン・サヴェンコフによって初めて発掘され、マルタ・ビュレット文化との文化的・遺伝的なつながりがあることが示唆されています。

遺跡の構成

アフォントヴァ・ゴラは複数の層序学的な層から構成されており、5つ以上のキャンプ跡が存在します。これらのキャンプ跡からは、マンモス狩りの痕跡が見つかっており、当時の人々がマンモスを狩猟しながら東方へ拡大していった様子がうかがえます。特に重要な遺跡は以下の通りです。

アフォントヴァ・ゴラI：ウマ、マンモス、トナカイなどの動物遺骨が出土。16,900年前のイヌ科動物の脛骨も発見されました。
アフォントヴァ・ゴラII：人間の化石が発見された場所。マンモス、ホッキョクギツネ、ホッキョクウサギなどの動物遺骨も出土しています。特に第3層からは、450以上の石器と250以上の骨角器が発見されています。
アフォントヴァ・ゴラIII：1884年に最初の発掘が行われた場所ですが、採掘活動によって一部が破壊されました。
アフォントヴァ・ゴラV：ノウサギ、ナキウサギ、ケーブライオンなどの動物遺骨が出土。

出土人骨

アフォントヴァ・ゴラ遺跡からは、アフォントヴァ・ゴラ2（AG2）とアフォントヴァ・ゴラ3（AG3）と呼ばれる2体の人骨が発見されました。

アフォントヴァ・ゴラ2

アフォントヴァ・ゴラIIで発見された男性の人骨で、年代はおよそ17,000年前（16,930-16,490 BP）と推定されています。DNA分析の結果、マリタ遺跡出土の人骨（マリタ少年）との遺伝的な類似性が高く、ブラジル先住民であるカリティアナ族との遺伝的親和性も高いことが示されました。Y染色体はハプログループQ1a1に属します。

アフォントヴァ・ゴラ3

2014年にアフォントヴァ・ゴラIIで発見された14～15歳くらいの少女の人骨で、年代は紀元前16,090年頃と推定されています。歯の形態分析から、アルタイ・サヤン地方の別の出土人骨との類似性が指摘されています。DNA分析の結果、ミトコンドリアDNAハプログループR1bに属し、ゲノムの約2.9-3.7％がネアンデルタール人由来であることが判明しました。

金髪の遺伝子

表現型分析の結果、アフォントヴァ・ゴラ3は金髪の髪の色に関連する遺伝子（rs12821256対立遺伝子）を持っており、この遺伝子を持つ最も古い個体であることがわかりました。この遺伝子は、後に東ヨーロッパの狩猟採集民集団にも見られ、ユーラシア西部に広がる前に古代北ユーラシア人の集団で発生したと考えられています。

タリムのミイラとの遺伝的近縁性

2021年の研究では、タリムのミイラがアフォントヴァ・ゴラ3に代表される集団の子孫であり、遺伝的に高い親和性を示すことが明らかになりました。タリムのミイラの祖先の約72％がアフォントヴァ・ゴラ3の遺伝子プロファイルに由来し、残りの28％はバイカル地方の古代北東アジア人に由来するとされています。

アフォントヴァ・ゴラ遺跡は、古代北ユーラシア人の遺伝的特徴や、その後の人類集団への影響を理解する上で、非常に重要な遺跡と言えるでしょう。

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