アブドルカリーム・カーシム

アブドルカリーム・カーシム

アブドルカリーム・カーシム（عبد الكريم قاسم）は、1914年11月21日に生まれ、1963年2月9日に亡くなったイラクの軍人および政治家で、イラク共和国の初代首相を務めました。彼の生涯は、イラクの政治史における重要な革命と混乱の時代を象徴しています。

幼少期と軍人時代

カーシムは、父がスンナ派の軍人で、母がシーア派の農民という家庭に生まれました。1926年にバグダードに移住し、1931年には中学校を優秀な成績で卒業しましたが、その後は1年で小学校教員の職を辞した後、1932年に陸軍大学校に入学。1936年に卒業し、以後は軍人としてのキャリアを重ねました。さらに、1951年にイギリスの陸軍士官学校を卒業し、そこでの経験は彼の軍事的スキルを磨く重要な要素となりました。カーシムは第一次中東戦争（1948年-1949年）と第二次中東戦争（1956年のスエズ運動）に従軍し、戦争の実態を身をもって体験しました。

イラク革命

1958年、カーシムはアーリフ兄弟の一人、アブドッサラーム・アーリフ大佐と共に自由将校団を結成し、クーデターを主導しました。これが通称「7月14日革命」として知られ、ハーシム王制を打倒して共和制を樹立することに成功しました。新たに樹立された政府においては、カーシムが首相、国防相、軍最高司令官を兼任し、アーリフが副首相および内相を務める形となりました。

政権発足後、カーシムはバクダード条約を破棄し、王政時代に拘束されていた共産党員を釈放。さらに、クルド民主党の指導者であるムスタファー・バルザーニの帰国を許可しました。

権力闘争と内政

当時のアラブ地域はアラブ社会主義の隆盛の時期であり、イラクもアラブ連合共和国との統合問題が浮上しました。この問題に対して、カーシムはイラク第一主義を重んじる慎重派として立ち回り、アーリフらナセリストの統合推進派と対立しました。最終的にはカーシムが権力を掌握し、ナセリストは逮捕され、アーリフらは人民裁判によって処罰を受けました。

その後、カーシムは共産党と連携を強化し、経済政策に共産的な要素を取り入れましたが、これに反発する民族主義者や軍部からの圧力は強まりました。モースルでは一時的なクーデターが発生しましたが、すぐに鎮圧され、彼を支持する共産党が新たに政権に参加しました。

失脚と次代の権力

カーシムは外交面でも国有化やOPECの設立を進め、1961年には独立したばかりのクウェートに対する領有権主張を行いました。この結果、イギリス軍の再駐留やアラブ連盟からの部隊展開を引き起こし、西側諸国や他のアラブ諸国との対立が深まりました。

1963年2月8日、アフマド・ハサン・アル＝バクル准将が率いるバアス党将校とナセリストによるクーデターが勃発し、その結果カーシムは政権を奪われました。彼は抵抗を試みましたが、最終的には降伏し、即決裁判で処刑される運命を辿りました。

アブドルカリーム・カーシムの短いが波乱に満ちた生涯は、イラクの歴史に大きな影響を与え、彼の名は現在でも議論の対象となっています。彼の行動や政策は、イラクの政治的風景を大きく変える契機となり、その後の政権に多大な影響を及ぼしました。

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