アミ族

アミ族：台湾原住民最大の民族

アミ族（Amis、台湾華語：阿美族、別名：Pangcah）は、台湾原住民の中で最大の人口規模を誇る民族集団です。2020年8月の統計によると、人口は約21万4737人に上ります。

広大な居住地域と都市への拡散

アミ族の居住地域は台湾東部一帯に広がり、花蓮県、台東県、屏東県などにまたがっています。主に平地に集落を形成し、花東縦谷、花蓮市や台東市周辺の平野部、太平洋沿岸の平地、恒春半島などに多く住んでいます。近年では、台北市や高雄市といった大都市部への居住者も増加しており、「大都市の原住民」を多く占める存在となっています。

アミ族からは、音楽、芸能、スポーツ、学術、教育、政治など、多様な分野で活躍する人材が輩出されています。

生活様式と伝統

アミ族の伝統的な生活は、稲作を中心とした農業、豚を中心とした畜産、そして沿岸部では漁業に依存していました。彼らの伝統集落は他の原住民と比較して規模が大きく、500～1000人が一つの集落を形成するのが一般的でした。現在では、花蓮、台東などの地方都市に加え、台北、高雄などの大都市で生活するアミ族の人々も増加しています。

花蓮県瑞穂郷の舞鶴にある石器時代の遺跡は、アミ族の発祥神話と関連付けられ、その発祥の地と考えられています。花蓮県吉安郷仁安村には、「花蓮阿美文化村」という観光施設があり、アミ族の文化を紹介する資料館や、伝統舞踊のショーなどが行われています。

言語と分類

アミ族の言語はオーストロネシア語族に属し、独自の文字体系は持ちません。高齢者層は日本語を話す人もいますが、若い世代は台湾華語を使用することが一般的です。

アミ族の人々は、自分たちのことを「Pangcah」と呼んでいますが、これは「人間」や「仲間」を意味する言葉です。しかし、現在では「アミ」という呼び名の方が一般的です。「アミ」はアミ語で「北」を意味します。

「アミ」という名称の由来については、明確な定説はありません。一つの説では、台東付近に住むプユマ族が、北に住むアミ族を指して「アミ」と呼ぶようになったというものです。もう一つの説は、アミ族の祖先が北方から来たため、自分たちを「アミ」と呼んでいたというものです。この説は、日本統治時代の調査報告書にも記述があります。

アミ族は、大きく5つの集団に分類されますが、これは地理的な区分に基づいたものであり、必ずしも文化や言語、身体的特徴の差異と一致するわけではありません。

南勢アミ群（北部アミ）
秀姑巒アミ群（中部アミの一部）
海岸アミ群（中部アミの一部）
卑南アミ群（南部アミの一部、ファランガウ・アミ）
* 恒春アミ群（南部アミの一部）

アミ族に最も近い民族は、フィリピン諸島の民族であると考えられています。

神話と民話

アミ族には、光り輝く女性Tiyamacanに関する神話や、兄弟と巨大な凧の物語など、数多くの神話や民話が伝えられています。これらの物語は、アミ族の起源や自然との関わり、社会構造などを反映しています。例えば、Tiyamacanの神話は、太陽神との関連性を示唆し、アミ族における太陽信仰の側面を垣間見ることができます。兄弟と凧の物語は、プユマ族との関係性や、アミ族の知恵と勇気を象徴しています。

社会構造と風習

アミ族の社会は、母系社会に近い要素を持っていました。家事や経済活動の中心は女性であり、家業や財産は長女が継承する母系相続が行われていました。しかし、村の運営は男性の長老会議によって行われ、村長は男性が務めていました。また、男性は成年式を経て青年団「カッパー」に入団し、年齢階級「スラル」に基づいて役割を担っていました。

アミ族の祭りには、豊年祭、播種祭、捕魚祭、海祭などがあり、豊年祭ilisinは最も重要な祭りです。豊年祭では、豚を供犠し、共同で食事をしたり、伝統的な歌や踊りが披露されます。

音楽と芸能

歌と踊りは、アミ族の文化を象徴する重要な要素です。伝統的な歌や踊りは、集落で受け継がれ、日常生活に溶け込んでいます。また、アミ族出身の歌手や芸能人も多く、台湾の音楽シーンに大きな貢献をしています。

エニグマのヒット曲『Return to Innocence』に使用されたアミ族の伝統歌は、世界的な知名度をもたらしました。この件は、著作権問題に関する裁判へと発展しましたが、結果的にはアミ族文化の振興に役立つこととなりました。

日本との関わり

日本統治時代には、アミ族は同化政策の影響を受けました。教育制度なども日本式のものが導入されました。また、高砂義勇隊にも多くのアミ族の人々が参加しました。終戦後も、インドネシアに潜伏していたアミ族の日本兵が帰還したという事実も知られています。

著名人

アミ族からは、プロ野球選手、陸上競技選手、ウェイトリフティング選手、歌手、俳優、政治家など、多くの著名人が輩出されています。彼らの活躍は、アミ族の文化と才能を世界に示すものです。

この記述は、アミ族の歴史、文化、社会、そして現代社会におけるその存在感を示すものです。その豊かさ、奥深さ、そして現代社会への適応力、更には世界への貢献は、今後も注目に値するでしょう。

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