プユマ族

プユマ族：台湾東海岸の誇り高き民族

台湾原住民を構成するプユマ族は、台湾東海岸の台東県に多く居住する民族です。かつては「八社蕃」と呼ばれ、複数の集落から成り立っていましたが、最も勢力のあったプユマの名称が定着しました。日本語文献では「パナパナヤン族」という表記も見られますが、これは研究者によるもので、一般には定着していません。

起源と歴史

プユマ族の起源については、複数の伝説が伝えられています。一つは、太麻里郷美和海岸近くの巨石が割れて祖先が誕生したという「巨石誕生伝説」です。知本村や建和村など複数の集落に伝承され、記念碑も建立されています。もう一つは、南王里周辺に伝わる「竹発祥伝説」で、祖先が竹から生まれたとされています。これらの伝説は、プユマ族のアイデンティティを象徴する重要な要素となっています。

歴史的には、清代の康熙年間、南王のプユマ族が朱一貴の乱の鎮圧に貢献し、清朝より「卑南大王」に封ぜられました。これにより、周辺のアミ族やパイワン族からの貢納を受け、台湾原住民の中で高い地位を築いた時期もありました。

社会構造と文化

プユマ族の社会構造は、母系社会を基盤とし、頭目制度と年齢階級組織が混在する複雑なものでした。部族全体の意思決定は、男子会所組織が行い、世襲の頭目（ayawan）が指導していました。現代では、村長が頭目の役割を事実上引き継いでいますが、伝統的な頭目は依然として尊敬を集めています。また、重要な祭祀を司る祭師（rahan）の存在も特筆されます。

プユマ族の文化において重要な位置を占めるのが、様々な祭祀です。豊年祭や収穫祭は、粟の栽培に深く結びついた農業社会を反映しています。大狩猟祭や猴祭は、会所の青年や少年の通過儀礼として行われ、社会の一員としての成長を祝う儀式です。これらの祭祀は、現代においても、プユマ族の伝統と精神性を伝える重要な役割を果たしています。

言語と現代社会

プユマ族は独自の言語、プユマ語を有しています。しかし、現代では若い世代のプユマ語話者が減少しており、言語の継承が大きな課題となっています。各地で言語復興運動が展開されているものの、その維持には継続的な努力が必要です。

それでも、プユマ族は現代社会においても大きな存在感を示しています。音楽界では、張惠妹（アーメイ）、陳建年、サミンガ（紀曉君）、家家など、多くの著名なアーティストを輩出しています。その他、政治、教育、文学、スポーツなど様々な分野で活躍するプユマ族の人々は、台湾社会に大きく貢献しています。

プユマ族と現代

近年では、台湾の高速鉄道である普悠瑪号の愛称がプユマ族に由来することからもわかるように、台湾社会において、その存在感は増しています。しかし、言語の継承や伝統文化の維持といった課題も同時に抱えています。これらの課題に対し、プユマ族の人々は、伝統を尊重しつつ、現代社会に適応する道を模索し続けています。

著名なプユマ族の人々

張惠妹（アーメイ）：台湾を代表する歌手
陳建年：元行政院原住民族委員会主任委員、元台東県長
サミンガ（紀曉君）：歌手
家家：歌手
陸森宝（Baliwakes）：教育家、音楽家、「プユマ音楽の父」
孫大川（パァラバン・ダナパン）：文学研究者、政治家
陳瑩：民主進歩党所属立法委員
巴代：作家
江明娟（エリカ・ジャン）：歌手
TANK (呂建忠)：歌手
黄美珍（ジェーン・ホァン）：歌手
劉笙彙（ジェシー・リウ）：ヘビーメタルバンドChthonicのギタリスト
曾建次：カトリック花蓮教区補佐司教
徐若熙：野球選手

これらの人々は、それぞれの分野で才能を発揮し、プユマ族の誇りを高めています。彼らの活躍は、プユマ族の文化と歴史を未来へと繋いでいく力となるでしょう。

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