アムル・イブン・アル＝アース

アムル・イブン・アル＝アース：イスラム初期の征服者

アムル・イブン・アル＝アース（583年 - 664年）は、イスラム初期における重要な政治家であり、傑出した武将でした。彼はパレスチナとエジプトの征服者として名を馳せ、ウマイヤ朝の初代カリフであるムアーウィヤの盟友としても知られています。

イスラムへの改宗とシリア征服

クライシュ族の名門サフム家出身のアムルは、初期には反イスラム陣営に身を置いていました。625年のウフドの戦いではクライシュ軍の一員として戦っています。しかし、628年のフダイビーヤの和議を機にイスラム教に改宗し、629年には正式にムスリムとなりました。

預言者ムハンマドの死後、リッダ戦争で目覚ましい活躍を見せたアムルは、634年4月にはヤジード・イブン＝アビー・スフヤーン、シュラフビール・イブン＝ハサナと共にシリア遠征軍の司令官に任命され、パレスチナ地方の征服を命じられました。イスラム軍がシリアへ侵攻すると、東ローマ帝国の大軍がこれを阻止しようとしました。イスラム軍はカリフのアブー・バクルに援軍を要請し、イラク戦線から派遣されたハーリド・イブン・アル＝ワリードの指揮下で、ヤルムークの戦いにおいて東ローマ軍を打ち破ることに成功しました。その後、新たにシリア派遣軍総司令官となったアブー・ウバイダの指揮のもと、フェヘルの戦いで再び東ローマ軍を破り、ヨルダン・パレスチナ地方の征服を進め、638年にはエルサレムを包囲・降伏させています。

エジプト征服

エルサレムにおいて、アムルはカリフのウマルにエジプト遠征計画を提案しました。ウマルは当初、その決断をためらいましたが、最終的には遠征を許可しました。アムルはわずか4千騎の兵を率いてエジプトへ向かいましたが、若い頃に隊商を率いてエジプトを旅した経験から地理に精通しており、また、当時のエジプトでは東ローマ帝国の支配に対する不満が高まっていたため、征服は比較的容易に進みました。

アムルは教義問題をめぐってコンスタンティノープル教会と対立していたコプト派キリスト教徒を味方につけ、640年2月にはペルシウムを攻略しました。現在のカイロ市にあったバビュロン城を包囲し、7月にはアイン・シャムス近郊で東ローマ軍を破りました（ヘリオポリスの戦い）。翌641年4月にはバビュロンを陥落させ、5月13日にはナイルデルタ西部の要衝ニキウを降し、本国からの援軍を加えた2万の軍勢で東ローマ帝国エジプト支配の中枢であったアレクサンドリアを攻囲しました（アレクサンドリア攻囲戦）。アレクサンドリアには5万人の東ローマ軍が篭城していましたが、東ローマ側の指揮官キルスは641年11月8日に降伏し、翌年9月には東ローマ軍はエジプトから撤退しました。アムルはアレクサンドリア攻略後、エジプト西方の安全を確保するためリビアのバルカまで侵攻し、この地方の住民に服従を誓わせています。

646年には東ローマ帝国がエジプト回復を試みましたが、ニキウの戦いで再び撃破されました。

アムルはエジプト支配の拠点として、バビュロン城に近いナイルデルタの頂点に軍営都市フスタートを建設しました。これが現在のカイロの原型となっています。また、アムルがフスタートの中心に建てたアムル・モスクはアフリカ大陸最古のモスクとして知られています。さらに、古代に作られたナイル川と紅海を結ぶ運河を浚渫し、復興させました。しかし、カリフのウマルはアムルがエジプトから十分な収益を上げていないと考え、上エジプトに別の総督を任じ、後継カリフのウスマーンはアムルをエジプトから召喚しました。

第一次内乱

（記述なし）

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