アラスの和約 (1435年)

アラスの和約についての詳細

アラスの和約（フランス語: Traité d'Arras、英語: Treaty of Arras）は、百年戦争の最中である1435年の9月21日に、フランスとブルゴーニュの間で結ばれた重要な講和条約です。この和約により、ブルゴーニュは長らくの同盟相手であったイングランドから離れ、フランスとの和平を結ぶという歴史的な転機がもたらされました。この出来事は、百年戦争の行方に大きな影響を及ぼしました。

和約締結の背景

百年戦争の初期には、イングランドがフランスに対して優位に立っていましたが、1429年にジャンヌ・ダルクがオルレアンを解放し、フランス軍が勝利を収めると、戦局は次第にフランス側へと傾いていきました。これに伴い、フランス王シャルル7世の支持が増す中で、ブルゴーニュ公フィリップ3世（善良公）がフランスとの和睦を模索し始めました。

ブルゴーニュ公は、戦争による負担の増加を理由に、イングランドとの同盟関係を見直す方向へと進んでいきます。イングランド側は当初、戦況が依然として有利であったため、ブルゴーニュの和睦提案には耳を貸すことがありませんでした。しかし、教皇庁の仲介もあり、1435年にアラス会議が開催される運びとなります。

アラス会議の開催

アラス会議は、実際にはイングランド、フランス、ブルゴーニュの三国が参加する形で進行しました。会議には教皇エウゲニウス4世の名代として、教皇使節ニッコロ・アルベルガティ枢機卿が参加し、重要な調停者としての役割を果たしました。およそ5,000人以上の使節団が集まり、史上最大規模の会議の一つとなりました。

会議の席では、フランスとイングランドの間で激しい意見の対立がありました。イングランドは、フランス王シャルル7世を自身の臣下と主張し、対するフランス側は、イングランドがフランス王位を放棄することを求める等、主張が平行線を辿りました。結局、会議は長期にわたる交渉の結果、イングランドが退席する事態になりました。

和約の内容

その後、フランスとブルゴーニュは和睦のための交渉を迅速に進め、9月21日にアラスの和約が締結されました。和約の主な内容には、以下のようなものが含まれます：

• - シャルル7世は、1419年の事件に関してフィリップ善良公に謝罪する。
• - フランスはペロンヌ、アミアン、サン＝カンタン等の地域を善良公に譲渡。
• - 善良公は一代限りシャルル7世への臣従を免除される。
• - 和約は教会からの保証を受け、イングランドとの同盟を規定したトロワ条約の無効も宣言されました。

この和約は、戦争によって分裂していたアルマニャック派とブルゴーニュ派の和解も促進しました。

和約の影響

和約締結後、イングランドはその後の展開に危機感を抱き、ブルゴーニュとの貿易が中断される中で、さらなる戦争を準備することを決定しました。それに対抗して、フランスは失地回復を進め、次々と勝利を収めていきました。

アラスの和約については、どの国が最も利益を得たのかという点で意見が分かれています。ブルゴーニュの外交的勝利を評価する意見もあれば、フランスがイングランドの同盟を引き離した点で勝者であるという意見もあります。また、善良公の目的についても意見が分かれており、フランスの政治的地位を確立したいとの解釈や、ネーデルラント地域を守るための戦略としてフランスとの和約を重要視したとの意見が存在します。このような多様な解釈と議論が続く中で、アラスの和約は歴史的な出来事として評価されています。

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