アラブ・東ローマ戦争

アラブ・東ローマ戦争

アラブ・東ローマ戦争は、7世紀から11世紀にかけて、アラブ人のイスラム王朝（主にウマイヤ朝、ファーティマ朝）と東ローマ帝国（ビザンツ帝国）の間で繰り広げられた一連の戦争です。この戦争は、宗教、領土、経済など、様々な要因が複雑に絡み合った長期にわたる紛争でした。

シリアを巡る戦い

7世紀初頭、アラビア半島を統一したイスラム教の預言者ムハンマドは、周辺諸国に通商の使者を派遣していました。しかし、キリスト教国であるガッサーン朝がイスラムの使者を殺害したことがきっかけとなり、両者の対立が激化します。ムハンマドは報復として、娘婿のザイドを主将とする軍をガッサーン朝に派遣しました。

629年、ムウタの戦いが発生し、ガッサーン朝とその同盟国であった東ローマ帝国がイスラム軍を打ち破りました。当時、東ローマ帝国はサーサーン朝ペルシア帝国との長年の戦いで疲弊しており、イスラム側も内部に反抗する部族を抱えていたため、双方は和平を結びました。しかし、イスラム側は東ローマ帝国への怨恨を抱き続けました。

634年、正統カリフのアブー・バクルが東ローマ帝国に宣戦布告し、シリアに出兵しました。イスラム軍はボスラやアジュナーダインで東ローマ軍に勝利し、エルサレムやダマスカスなどの主要都市を次々と占領しました。東ローマ皇帝ヘラクレイオスはシリア奪還を目指し、636年に大軍を率いてアンティオキアに入城し、弟のテオドロスとアルメニア系の将軍ヴァーハーンに軍勢を託してシリアの諸都市を奪還させました。イスラム側は東ローマ帝国を疲弊させるため、あえて都市を放棄し、ジャーヒヤまで後退しました。

東ローマ軍はイスラム軍を殲滅するため、ジャーヒヤへ侵攻を開始しましたが、ヤルムーク川で待ち受けていたイスラム軍に大敗を喫しました（ヤルムークの戦い）。この戦いで東ローマ帝国のシリア軍団は壊滅的な打撃を受けました。イスラム軍は兵力が激減した東ローマ軍を追撃し、637年にはエルサレム、アレッポ、アンティオキアを占領し、シリアをほぼ完全に制圧しました。

主な戦い

ヤルムークの戦い (636年)
アモリオンの戦い (838年)
ララカオンの戦い (863年)
オロンテスの戦い (995年) - 9月15日
アクロイコンの戦い (740年)
アザーズの戦い (1030年)

関連項目

アラブ・東ローマ戦争における捕虜交換
カーティーンの戦い

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