アルキメデー

アルキメデー（古希: Ἀλκιμέδη, Alkimedē）は、古代ギリシア神話に語られる女性の一人です。その名前は、長母音を省略してアルキメデと表記されることもあります。

彼女は、テッサリアー地方の都市ピュラケーの王ピュラコスと、オルコメノス王ミニュアースの娘クリュメネーの間に生まれました。また、イーピクロスという姉がいたと伝えられています。アルキメデーは英雄たちの父アイソーンと結ばれ、後に数々の冒険で名を馳せる息子イアーソーンをもうけました。イアーソーンは、伝説的な船アルゴー号に乗ってコルキスへ赴き、金羊毛を持ち帰ったことで広く知られています。

しかし、イアーソーンの父アイソーンの妻、すなわち彼の母が誰であったかについては、古代の著述家たちによって異なる説が唱えられています。アルキメデーこそがアイソーンの妻であるとする伝承は、紀元前6世紀の系譜学者であるレーロスのペレキューデースが最初に述べたものとされています。この説は後に、紀元前3世紀の詩人ロドスのアポローニオスや、紀元後1世紀の著述家ヒュギーヌスなどによっても採用されています。ただし、ヒュギーヌスの伝えるところでは、アルキメデーの両親はクリュメノスとクリュメネーであるとされており、他の伝承とはわずかに異動が見られます。

これに対して、別の文献では異なる人物がイアーソーンの母として挙げられています。たとえば、古代ギリシアの詩人ヘーシオドスは、アイソーンの妻をポリュメーレーであったと記しています。また、紀元前1世紀から紀元後1世紀にかけて活動したアポロドーロスは、その著書『ギリシア神話』の中で、アイソーンの妻はアウトリュコスの娘ポリュメーデーであったとしています。

アルキメデーの母クリュメネーがオルコメノス王ミニュアースの娘であったことは、イアーソーンを含む一部のアルゴナウタイ（アルゴー船の乗組員たち）が、「ミニュアースの子孫」を意味する「ミニュアイ」と呼ばれたことの由来の一つとして語られています。このように、アルキメデーの存在は、イアーソーンの系譜を通じて、アルゴー船の英雄たちの出自を示す重要な要素として位置づけられています。

ロドスのアポローニオスが著した叙事詩『アルゴナウティカ』には、アルゴー船がコルキスを目指してイオールコスを出港する際の情景が描かれています。この記述によれば、この時すでにアルキメデーの夫であるアイソーンは世を去っていました。アルキメデーは、息子のイアーソーンが危険な航海へと旅立つのを見送るため、他のイオールコスの人々とともに港に集まり、涙ながらに船出を見守ったと伝えられています。

アルキメデーは、大英雄イアーソーンの母としてギリシア神話に登場する重要な女性ですが、その正確な系譜やアイソーンとの関係については、古代の多様な伝承の中で複数の説が存在していることを理解することが重要です。特にペレキューデース以来、彼女がイアーソーンの母であるという説は有力なものとして語り継がれています。

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