アルコヴァサウルス

アルコヴァサウルス：長い棘を持つジュラ紀の装盾類

アルコヴァサウルス（Alcovasaurus longispinus）は、後期ジュラ紀に生息していた装盾類に属する恐竜です。アメリカ合衆国ワイオミング州のモリソン層で発見され、その特徴的な長い尾の棘で知られています。本稿では、アルコヴァサウルスの発見と命名の経緯、形態的な特徴、そして分類学的な位置づけについて詳しく解説します。

発見と命名

1908年、ウィリアム・リード教授とA・C・ダートによって、ワイオミング州のアルコヴァ採石場で剣竜類の骨格が発掘されました。この発掘はリードにとって最後の恐竜発掘となりました。1914年、チャールズ・ギルモアは、ホロタイプ標本UW 20503（元UW D54）に基づいて、この標本をStegosaurus longispinusとして記載しました。この標本は、42個の脊椎骨、断片的な腸骨、2つの座骨、恥骨の一部、右大腿骨、肋骨、そして尾のスパイク（サゴマイザー）から構成される成体の部分骨格でした。

種小名longispinusはラテン語で「長い棘」を意味し、これは尾のスパイクの長さに由来します。研究者たちは、この長い尾のスパイクこそが、本種をステゴサウルス属の独立種として区別する重要な特徴であると考えていました。しかし、1993年には、ジョージ・オルシェフスキーらが、本種がアフリカに分布するケントロサウルス属の北米産種である可能性を指摘しました。

模式標本は、1920年代にワイオミング大学博物館の水道管破裂事故により破損してしまいました。そのため、標本の所在について誤解が生じ、一時的に失われたものと考えられました。しかし、UW 20503として登録された大腿骨は現存しており、サゴマイザーの石膏模型も製造されています。また、発掘中の骨格写真も残されており、博物館で展示されています。

ナトロナサウルスからアルコヴァサウルスへ

ステゴサウルス・ロンギスピヌスの独自性は長らく議論の対象でした。特に、長いサゴマイザーは個体差や性的二形の結果である可能性も指摘されていました。しかし、アマチュア古生物学者のローマン・ウランスキーは、長い尾の棘がステゴサウルス属からの分離を正当化するのに十分であると判断し、新属Natronasaurus（ナトロナサウルス）に移しました。ウランスキーは、オルシェフスキーらの系統分析に基づいて、ナトロナサウルスをケントロサウルスの近縁属とみなしました。しかし、ウランスキーの論文は自費出版であり、正式な出版物として認められなかったため、ナトロナサウルスは無効名となりました。

その後、ピーター・ガルトンとケネス・カーペンターによって、2016年に本種にAlcovasaurus（アルコヴァサウルス）という新しい属名が与えられました。この属名は、化石が発見されたアルコヴァ採石場に由来します。ガルトンとカーペンターはまた、1990年代にクリフ・マイルズがワイオミング州で発見した巨大なスパイクに基づいて、アルコヴァサウルスを記載しました。

形態的特徴

ギルモアは、ロンギスピヌス種を、非常に長いサゴマイザー、遠位尾側椎骨の雌側の突起、そしてキノコ型の背側延長部を持つ椎間板によって、ステゴサウルスの他の種と区別しました。ガルトンとカーペンターは、以下の5つの固有派生形質を指摘しました。

1. 遠位側、後方側、尾側椎骨に側方の突起が存在する。
2. 遠位の尾椎は短く、長さよりも高さがある。
3. 非常に細長く、細長い2本のスパイクがあり、大腿骨の長さの90％に達する。
4. 最後の1対のスパイクは、シャフトの長さの4分の1で最大の幅を持つ。
5. 大腿骨の関節丘の下関節表面は下側に限定される。

さらに、アルコヴァサウルスは、ジュラ紀の北米産ステゴサウルスであるStegosaurus stenops, Stegosaurus sulcatus, Hesperosaurusとは、仙骨の数が4つではなく6つである点で異なっています。他のステゴサウルス類では、仙骨の数は最大でも5つです。ギルモアはまた、アルコヴァサウルスが前方のペアと同等の形質を持つ後方のスパイクのペアを持つ点で独特であると主張しました。ガルトンとカーペンターは、現存する証拠写真からこの形質を確認することは困難であるものの、4本のスパイクを持つ他の剣竜類では後方のペアの方が短いため、アルコヴァサウルスはこの点で異なっていると指摘しています。また、2対のスパイクは互いに非常に離れて配置されています。

ギルモアによると、大腿骨の長さは1082mm、最長のスパイクは86cmです。このスパイクの先端は破損しており、ギルモアは元の長さは985mmであったと推定しました。

武器としてのサゴマイザー

ガルトンとカーペンターは、アルコヴァサウルスのサゴマイザーは主に武器として使用されたと考えています。彼らは尾全体に連続する尾対の側面の突起を調べ、尾を強力に振り回すための発達した筋肉を支持していたと結論付けました。また、腰椎が短縮されていることから、尾はステゴサウルスよりも4分の1短かったと考えられます。より短い尾は、非常に長いスパイクによって引き起こされるねじれを相殺することができたと考えられます。

分類

ガルトンとカーペンターは、アルコヴァサウルスをステゴサウルスよりもケントロサウルスに近いとは考えず、ステゴサウルス科のメンバーであるとしました。しかし、2017年のトーマス・レイヴンとスザンナ・メイドメントによる系統解析では、アルコヴァサウルスは寛脚類（剣竜と曲竜）の成体に見られる大腿骨の転子の間の癒合を欠くことから、ステゴサウルス類には分類できないとされました。ただし、これは標本が未成熟な個体であった可能性も示唆しており、ホロタイプが失われていることから、完全な解明は困難です。近年ではミラガイアの一種であるという説も提唱されました。

アルコヴァサウルスは、その特異な形態と分類上の位置づけをめぐる議論を通じて、剣竜類の進化と多様性を理解する上で重要な役割を果たしています。

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