アルジェリー (重巡洋艦)

アルジェリー：フランス海軍最後の重巡洋艦

フランス海軍の重巡洋艦「アルジェリー」は、1930年代、イタリア海軍のザラ級重巡洋艦に対抗すべく建造されました。北アフリカのアルジェリアにちなんで命名された同艦は、フランス海軍が建造した最後の重巡洋艦という歴史的意義も持ちます。

従来艦からの進化

従来のフランス重巡洋艦とは異なり、「アルジェリー」は速力よりも防御力の強化を重視した設計が特徴です。これは、当時の国際情勢、特にイタリア海軍の急速な近代化と、ドイツ海軍の「ポケット戦艦」の脅威を踏まえた結果でした。フランスは、地中海や北アフリカ方面のシーレーン防衛に強力な艦艇を必要としていたのです。

「アルジェリー」の設計にあたっては、ワシントン海軍軍縮条約による排水量制限（1万トン）を遵守しながら、攻撃力、防御力、機動力のバランスを高度に追求しました。その結果、同時期の条約型重巡洋艦の中でも高い戦闘能力を誇る艦艇に仕上がりました。本艦の建造をもって、フランス海軍の条約型重巡洋艦建造計画は一旦終了し、その後は軽巡洋艦の建造へとシフトしていきます。

艦型と構造

「アルジェリー」は、従来のフランス巡洋艦に見られた船首楼型ではなく、平甲板型船体を採用しました。これは、複雑な船首楼型の構造よりも軽量化と艦内容積の拡大に有利だったためです。艦橋構造も、従来の三脚檣から塔型艦橋へと変更されました。これは、航海・戦闘艦橋の機能向上と利便性向上のための設計変更で、結果的に大日本帝国海軍の戦艦に見られた「パゴダ・マスト」のような外観となりました。また、煙突は1本に統合され、その周囲には艦載艇や水上機のためのクレーンが設置されました。船体構造においては、鋲接構造に代えて溶接を採用し、さらなる軽量化が図られました。

武装

主砲は、50口径20.3cm砲を4基搭載。砲塔は新型のものとなりました。高角砲には、新設計の「1930年型10cm（50口径）高角砲」12門を装備。これは後にリシュリュー級戦艦にも採用された砲で、当時の条約型重巡洋艦としては破格の門数を誇りました。しかしながら、射撃速度や旋回・俯仰速度は必ずしも優れたものではなく、高角砲としては必ずしも優秀とは言えませんでした。対空兵器としては、1942年の改装で37mm機関砲と13.2mm機銃が増備され、対空射撃指揮装置とレーダーも追加装備されています。

機関

「アルジェリー」の機関配置は、従来のフランス巡洋艦に見られた「シフト配置」ではなく、「全缶全機配置」を採用しました。これは、機関室の防御範囲を拡大し、防御重量の増加に繋げるためです。ボイラーは9基から6基に減少しましたが、タービン数は増加し、4軸推進となりました。出力は若干減少したものの、船体形状の改善により、公試では設計出力以上の速力を発揮しました。燃料搭載量はやや増加し、航続距離も向上しています。

防御

「アルジェリー」の防御力は、仮想敵であるザラ級重巡洋艦に対抗するため、従来のフランス重巡洋艦をはるかに凌駕するものでした。重量計算を綿密に行い、防御重量を確保することで、舷側水線部装甲は110mm、主砲塔前盾装甲は110mmという重装甲を実現しました。機関区装甲も95mmに達し、艦の生存性を高める設計がなされています。また、対魚雷防御として、インナーバルジ方式も採用されました。

艦歴

「アルジェリー」は1931年に起工、1934年に就役しました。第二次世界大戦勃発後は、地中海艦隊に所属し、ドイツのポケット戦艦に対処する任務などに従事。1940年にはイタリア本土への砲撃を実施しました。これは海軍艦艇による列強の本土への艦砲射撃として、大戦における最初の事例となりました。その後、フランス降伏に伴いヴィシー政権下で活動しますが、1942年のトーチ作戦発動を受けて、トゥーロン港で自沈処分されました。その後、イタリア軍により浮揚されましたが、損傷が激しく解体されました。

まとめ

「アルジェリー」は、当時の国際情勢を反映した防御力重視の設計と、洗練された艦型、強力な火力、優れた防御力を備えた、フランス海軍を代表する重巡洋艦でした。その短い艦歴は、激動の時代の象徴と言えるでしょう。その詳細な艦歴やスペックは、第二次世界大戦における海軍史研究において貴重な資料となります。

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