アルタリア (列車)

アルタリア（Altaria）: スペインの軌間可変型高速列車

アルタリアは、スペインの国営鉄道会社レンフェ（Renfe）が2001年6月10日から2020年6月22日まで運行していた長距離列車です。この列車は、スペインの鉄道網における高速化と都市間の接続性向上に重要な役割を果たしました。ここでは、アルタリアの前身であるタルゴ200（Talgo 200）についても触れながら、その歴史と特徴を詳しく解説します。

概要

アルタリアは、タルゴⅣ、Ⅵ、Ⅶ客車とそれを牽引する機関車で構成されています。客車には、1等車相当のプレフェレンテ車両、2等車相当のトゥーリスタ車両、そしてカフェテリア車両があります。プレフェレンテ車両では、食事時間帯に料理サービスが提供され、車内ケータリングサービスは国際寝台車会社（ワゴン・リ社、CIWL）が担当していました。

アルタリアの最大の特徴は、軌間可変装置を搭載している点です。これにより、イベリア軌間（広軌）と標準軌の高速線の間を直通運転することが可能となり、高速線を最高時速200kmで走行することで都市間の移動時間を大幅に短縮しました。ただし、牽引する機関車には軌間変更装置が搭載されていないため、軌間変更施設において機関車の付け替えが必要でした。

沿革

スペイン初の高速鉄道路線であるマドリード＝セビージャ高速線が開通した1992年、マドリードとマラガを結ぶ列車が登場しました。この列車には、当時最新の軌間変更装置付きのタルゴ客車が導入されましたが、列車名はタルゴ・ペンデュラー マドリード・マラガでした。

翌1993年には、マドリードとウエルバ、カディスを結ぶ列車が登場し、これらの列車には新たに「タルゴ200」という名称が与えられました。1994年には、マドリード - マラガ間の列車もタルゴ200に改名されています。

タルゴ200は、新在直通運転による大幅な所要時間短縮が評価され、人気を博しました。特にマドリード - マラガ間では、40両を超える長大な編成で運行される日もありました。1999年には、マドリードとアルヘシラスの間でも運行が開始され、所要時間は約3時間短縮されました。

2001年には、マドリード - アリカンテ間の新在直通列車が登場し、この列車には「アルタリア」という名称が与えられました。これに伴い、マドリード - ウエルバ、カディス、アルヘシラス間のタルゴ200もアルタリアに改名されました。

2003年にマドリード＝バルセロナ高速線の一部が開業すると、マドリードとバルセロナ、パンプローナ、ログローニョなどを結ぶ多くのタルゴ列車がアルタリアに変更され、運行範囲が拡大しました。しかし、2005年のレンフェの上下分離・民営化に伴い、2006年にはマドリード - バルセロナ間の列車は、一部を除いてアルビアに置き換えられ、2008年にはAVEへと移行しました。

その後も高速新線の延伸と運行区間の改編が進められ、2007年にはマドリード - マラガ間の列車が全線高速新線経由のAVEに変更されました。2008年には、北部・北東部方面の列車が、タラゴナの軌間変更施設を利用することで時間短縮を図り、機関車の付け替えを省ける130系を使用したアルビアに置き換えられ、バルセロナ発着系統もマドリード発着系統に統合されました。

最終的に、アルタリアとして存続したのは、マドリード - アルヘシラス間、マドリード - ムルシア/カルタヘナ間、マドリード - グラナダ間の3系統となりました。2015年には、グラナダ方面の列車が工事のためAVEと代行バスに置き換えられましたが、2019年の工事完了に伴いAVEでの運行が再開されました。

アルタリアとして運行されていたマドリード - アルヘシラス間とマドリード - ムルシア/カルタヘナ間の列車は、2020年6月にレンフェの優等列車名の改編により、統一ブランドのレンフェ・インターシティに組み込まれ、アルタリアとしての歴史に幕を閉じました。現在では、運行形態と車両はそのままに、レンフェ・インターシティとして運行されています。

アルタリアは、スペインの鉄道史において、高速鉄道網の発展と都市間の移動時間短縮に大きく貢献した列車として、その名を刻んでいます。

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