アルテュス王

エルネスト・ショーソンの歌劇『アルテュス王』

『アルテュス王』（仏: Le roi Arthus）は、エルネスト・ショーソンが1886年から1895年にかけて作曲した3幕6場からなる叙情的悲劇です。ショーソン自身がフランス語の台本を手がけました。

概要

この作品は、長らくワーグナーの影響、特に『トリスタンとイゾルデ』や『パルジファル』からの影響が強いとされてきました。しかし近年では、ベルリオーズの音楽書法の影響も重視されるようになり、優れたオペラとしての独自性が再評価されています。具体的には、第1幕と第3幕のジェニエーヴルの死の場面や、終幕などがベルリオーズの作品を彷彿とさせます。これらの場面は、ショーソンの美学である、浄化された心の平静さ、メランコリックな郷愁、崇高さを伴った高揚感、理想主義的な寛容といった要素によって彩られています。

ショーソンは、ジェニエーヴルがランスロットと共にアルテュス王を裏切るという台本を、散文と韻文を巧みに織り交ぜて書き上げました。彼はこの作品の主題を慎重かつ個性的に扱い、『トリスタン』との比較は必ずしも適切ではないと述べています。

初演とその後

初演は、ショーソンの死後4年を経た1903年11月30日に、ブリュッセルのモネ劇場で行われました。アルベール・デュボスクが舞台美術と演出を担当し、衣装デザインはショーソンの義兄弟であるルロール・アンリの工房で、象徴派の画家フェルナン・クノップフがショーソン未亡人の監修のもとに行いました。

フランスでの初演は1916年11月30日、第3幕のみが不完全な形で行われました。1946年6月24日、ショーソンの没後50周年記念演奏会で、ウジェーヌ・ビゴーがフランスで初めて全曲を演奏しました。その後、1996年にはドルトムントとブレゲンツ、1997年にはモンペリエとケルン、2003年には世界初演100周年を記念してモネ劇場で上演されました。2014年にはストラスブール・ラン国立歌劇場で上演されています。

2015年5月/6月には、演出家グラハム・ヴィックによる新しいプロダクションが、パリ・オペラ座で上演されました。指揮はフィリップ・ジョルダン、アルテュス王をトーマス・ハンプソン、ジェニエーヴルをソフィー・コッシュ、ランスロットをロベルト・アラーニャが務めました。

近年の主な上演

1994年6月20日、オランダ・フェスティヴァル、アムステルダム・コンセルトヘボウ（コンサート形式上演）
1996年5月5日、ドルトムント歌劇場
1996年7月、ブレゲンツ祝祭劇場
1997年3月、ケルン歌劇場（ブレゲンツ・フェスティバルと同様のプロダクション）
1997年4月、モンペリエ歌劇場（ドルトムント歌劇場と同様のプロダクション）
2000年8月22日、エディンバラ・フェスティバル劇場（コンサート形式上演）
2001年2月4日、ニューヨーク、エイブリー・フィッシャー・ホール（コンサート形式上演）
2003年10月/11月、ブリュッセル・モネ劇場（世界初演100周年記念公演）
2014年3月/4月、ストラスブール・ラン国立歌劇場、ミュルーズ、ラ・フィラチュール劇場
2015年5月/6月、パリ・オペラ座バスティーユ歌劇場

登場人物

アルテュス王
ジェニエーヴル
ランスロット
モルドレッド
メルラン
リオネル
アラン
合唱: 騎士たち、従者たち、吟遊詩人たち、ジェニエーヴルの付き人の女性たち

あらすじ

第1幕

第1場: アルテュス王の城の大広間では、サクソン人に対する勝利が宣言されます。アルテュス王はランスロットの功績を讃え、ジェニエーヴルも同様に賛辞を送ります。モルドレッドはジェニエーヴルに恋心を抱いていますが、ランスロットとジェニエーヴルの親密な様子を妬ましく思っています。
第2場: ランスロットとジェニエーヴルは密会を重ね、不倫の関係に陥ります。密会を目撃したモルドレッドを、ランスロットは剣で打ち倒し、ジェニエーヴルの勧めに従い森へ逃げ込みます。

第2幕

第1場: 一命を取り留めたモルドレッドは、ランスロットとジェニエーヴルの密会を暴露します。アルテュスはランスロットの無実を信じ、帰還を促しますが、ランスロットは真実を隠せないと考え、ジェニエーヴルと共に逃亡することを決意します。
第2場: 真実を確かめたいアルテュス王は、魔術師メルランに助言を求めますが、「アルテュスの王国は滅びる」という予言を受けます。アルテュス王はランスロットとの戦いを決意し、出陣します。

第3幕

第1場: ランスロットはアルテュス王とその剣エクスカリバーを目にし、戦意を喪失して敗走します。ジェニエーヴルは逃亡を拒否し、アルテュス王の前で自害します。絶望したランスロットは、死を覚悟して戦場に戻ります。
第2場: 負傷したランスロットは、自らの罪に対する処罰を求めます。アルテュス王はランスロットを許し、神の慈悲を祈ります。すると天上の声が聞こえ、アルテュスに平和と忘却を勧めます。そこに、アルテュスを迎えにきた船が現れ、物語は幕を閉じます。

楽器編成

木管楽器: フルート、ピッコロ、オーボエ、コーラングレ、クラリネット、バスクラリネット、コントラバスクラリネット、バスーン
金管楽器: トランペット、ホルン、トロンボーン、テューバ
打楽器: ティンパニ、大太鼓、シンバル、古代シンバル、トライアングル
弦楽器
* その他: ハープ

演奏時間

全幕で約2時間45分。

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