アルトゥーロ・バジーレ

アルトゥーロ・バジーレ：オペラに捧げた生涯

アルトゥーロ・バジーレ（Arturo Basile, 1914年1月16日 - 1968年5月21日）は、イタリアを代表するオペラ指揮者の一人です。ヴェルディやプッチーニといった、イタリアオペラの巨匠たちの作品を得意とし、その情熱的な指揮で多くの観客を魅了しました。

生い立ちと音楽への道

1914年、シチリア州カニカッティーニ・バーニで生まれたバジーレは、9歳の時にトリノに移住。12歳でトリノ音楽院に入学し、当初はオーボエを専攻しました。その後、ジョルジョ・フェデリコ・ゲディーニの指導も受け、音楽家としての基礎を築きました。

1933年に音楽院を卒業後、兵役を経て1941年にイタリア国営放送（EIRA）の専属オーケストラであるトリノ放送管弦楽団にオーボエ奏者として入団。フルート奏者のセヴェリーノ・ガッゼローニと出会い、互いに刺激しあいながら音楽家としての腕を磨きました。

指揮者としてのデビュー

第二次世界大戦後の1943年、バジーレはトリノのテアトロ・カリニャーノで指揮者としてデビューを果たします。1944年には、急病で倒れたジーノ・マリヌッツィの代役としてプッチーニの『マノン・レスコー』を指揮し、その才能を高く評価されました。ラ・スタンパ紙は、「バジーレは立派にオーケストラを制御し、スタンディングオベーションで讃えられた」と報じています。

マリア・カラスとの共演

1946年、トゥリオ・セラフィンが審査委員長を務める指揮者コンクールで優勝。1949年には、ソプラノ歌手マリア・カラスのチェトラへの最初の正規録音で、トリノ放送管弦楽団を指揮しました。カラスはバジーレの指揮のもと、ベッリーニの『ノルマ』、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』など、重要なレコーディングを行いました。

国際的な活躍

その後、バジーレはイタリア国内の主要な歌劇場に加え、モンテカルロ、オランダ、オーストリア、アメリカ、日本、フランスなど、世界各地の歌劇場やオペラ公演に出演し、国際的な名声を確立しました。1960年から1961年にはボローニャ市立劇場の首席指揮者を務め、その後はローマ歌劇場、サン・カルロ劇場、パルマのテアトロ・レージョなど、数々の劇場で客演指揮者を務めました。

当時のイタリアを代表する歌手たち、レナータ・テバルディ、ジュリエッタ・シミオナート、ジュゼッペ・ディ・ステファノらは、バジーレの指揮のもとで、普段はあまり立つことのなかった劇場で舞台に立ち、その才能を披露しました。

突然の悲劇

しかし、バジーレの輝かしいキャリアは、突然の悲劇によって幕を閉じます。再建途上のトリノのテアトロ・レージョの音楽監督への就任を内諾した帰路の1968年5月21日、バジーレは交通事故に遭い、同乗していたソプラノ歌手ジャンナ・ガリの妹マリーサとともに死去しました。54歳という若さでした。

日本との関わり

バジーレは、1961年のNHK招聘「第3回NHKイタリア歌劇団」公演で来日し、東京文化会館や大阪のフェスティバルホールでヴェルディの『リゴレット』やプッチーニの『トスカ』を指揮しました。この公演は大きな成功を収め、日本のオペラファンに深い印象を与えました。

音楽的遺産

バジーレの死後、その名前は徐々に忘れ去られつつありましたが、1990年代後半から2000年代にかけて、残された録音が復刻され、再び注目を集めています。彼の情熱的でドラマティックな指揮は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

アルトゥーロ・バジーレは、オペラに情熱を注ぎ、その才能を世界に広めた偉大な指揮者でした。彼の音楽は、これからも長く人々の心に響き続けることでしょう。

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