アルトマルク号事件

アルトマルク号事件

アルトマルク号事件は、第二次世界大戦中の1940年2月16日に発生した、ノルウェーの領海を舞台とする軍事的衝突です。この出来事はイギリス海軍とドイツ海軍の間でのものであり、その結果、イギリスはドイツのタンカーから299名の捕虜を奪還しました。この事件は、イギリス海軍にとっては特に重要な出来事であり、以降の戦局に対する影響を及ぼしました。

背景

1940年2月、ドイツのタンカーアルトマルク号は、捕虜299名を乗せた状態で大西洋を航行していました。これらの捕虜は、ドイッチュラント級装甲艦アドミラル・グラーフ・シュペーによる攻撃で沈んだ商船の乗員であり、彼らはドイツ本国に向かっていました。然而、ノルウェーの領海に入った際、アルトマルク号はノルウェー当局による調査を受けました。

ノルウェーの海軍士官が行った捜索では、ドイツの乗員はこの船が商業目的の運行であると主張し、それに対する証拠を見せました。結局、ノルウェー当局はアルトマルク号の通航を許可しましたが、船倉には捕虜が閉じ込められており、彼らは必死に助けを求めていました。ノルウェー側の捜索隊が船倉を調べることはなく、船はそのまま通過しました。

英国の対応

その後、アルトマルク号はイギリス空軍機に発見され、本国に通報されました。イギリスの海軍大臣ウィンストン・チャーチルは、ドイツ海軍との戦闘の機会を狙っていましたが、直前のキャサリン作戦は否決。そしてアルトマルク号の発見という新たな情報を受けて、直ちに行動計画が練られました。イギリスの駆逐艦はアルトマルク号に接近し、停船を命じましたが、ドイツ側は拒否しました。

イギリスの駆逐艦がアルトマルク号に迫る中、ドイツのタンカーはイェッシングフィヨルドに逃れます。そこで、イギリス艦艇コサックが単独行動を取り、接舶の強行を実施。22時20分に駆逐艦が船に乗り込み、戦闘が発生しました。乗組員が圧倒される中、7名が殺害され、捕虜は解放されました。捕虜を乗せたコサックは、2月17日の真夜中にイェッシングフィヨルドを離れました。

ノルウェーの反応

ノルウェーの護衛艦は事後に抗議したものの、実質的な介入は行われず、ノルウェー政府はイギリスに対し、船の損害賠償と中立の尊重を求めました。一方、イギリス政府はノルウェー側の対応に疑問を呈しました。ノルウェー側は、ドイツの船だからといって強制的に臨検することはできなかったと説明しましたが、この出来事はノルウェーの中立に対する危惧を両陣営に植え付けました。

その後の影響

この事件は、アメリカや他の国々に大きな衝撃を与え、ノルウェー人たちは自国の中立が侵害されることに憤りを覚えました。しかし、アルトマルク号事件をきっかけに、連合国とドイツはそれぞれノルウェーへの侵攻を企図します。ドイツは、ノルウェーの中立を尊重しない連合国に対抗するため、デンマークとノルウェーを占領するための準備を始めました。

この事件は、イギリス海軍にとって士気を高める要因として機能し、コサックの指揮官は瞬く間に国民的英雄となりました。逆に、ドイツがノルウェーを占領する根拠となり、戦争が激化する一因ともなりました。結果的に、アルトマルク号事件は第二次世界大戦の中で非常に重要な出来事の一つとなり、その影響は長い間続くこととなったのです。

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