アルト・サクソフォーンと弦楽オーケストラのための協奏曲

アルト・[[サクソフォーン]]と弦楽オーケストラのための協奏曲

アレクサンドル・グラズノフ作曲の「アルト・[[サクソフォーン]]と弦楽オーケストラのための協奏曲 作品109」は、サクソフォーン音楽の中でも特に重要なレパートリーの一つとして知られています。比較的新しい楽器であるサクソフォーンにとって、古典派やロマン派の時代に書かれた作品は多くありません。この協奏曲は、そのような状況において、サクソフォーンの可能性を広げる貴重な存在となっています。

作曲の背景

グラズノフは早熟の天才として名を馳せましたが、1900年代初頭から創作意欲が徐々に衰え始めました。ロシア革命後、パリへ亡命してからはその傾向が顕著になりましたが、作曲活動自体は続けられました。この協奏曲は、グラズノフが亡くなる前年の1935年に作曲されたオルガン独奏曲「怒りの日による幻想曲 作品110」と並び、彼の最晩年に属する作品です。

作品番号109は、1932年に作曲されたサクソフォーン四重奏曲にも割り当てられています。この四重奏曲のパリ初演を聴いたドイツのサクソフォーン奏者ジーグルト・ラッシャー（Sigurd Rascher, 1907年 - 2001年）が感銘を受け、グラズノフに協奏曲の作曲を依頼しました。その結果、1934年の春にこの協奏曲が作曲され、ラッシャーに献呈されました。初演は1934年11月26日にスウェーデンのニュヒェーピングにある聖ニコライ教会で行われ、ラッシャーの独奏、トルド・ベナー指揮ノールショピング交響楽団によって演奏されました。グラズノフ自身がこの演奏を聴く機会があったかどうかは定かではありません。

出版

初版は1936年にアルフォンス・ルデュック社（パリ）から出版されました。長らくこの版のみが出回っていましたが、2010年にベーレンライター社からグラズノフの自筆原稿とラッシャーによる演奏に基づいた新しい版が出版されました。ベーレンライター版には、ルデュック版のカデンツァに加えて、短縮版カデンツァとラッシャー自身による全く異なるカデンツァの3種類が収録されています。また、フランスの作曲家クリスティアン・ローバによるカデンツァも存在します。

楽器編成

アルト・[[サクソフォーン]]（まれにヴィオラで演奏されることもあります）
弦楽5部

演奏時間

約15分

楽曲構成

この協奏曲は、切れ目なく演奏される単一楽章の作品ですが、大きく3つの部分に分けることができます。これらの3つの部分は、急 - 緩 - 急という構成になっており、古典的な協奏曲の形式を再構成したものと解釈できます。作曲技法上の注目点として、「第1楽章」に登場する2つの主題のモチーフを変形・発展させる形で他の部分の主題が形成されており、全曲に統一感をもたらす役割を果たしている点が挙げられます。

以下では、便宜的にそれぞれの部分を楽章として扱います。

第1楽章

アレグロ・モデラート、変ホ長調、4/4拍子。弦楽器のユニゾンによる第1主題の演奏で幕を開けます。続いてサクソフォーンがこの主題を変形させながら反復します。この主題に含まれる要素は、変形されながら全曲に登場し、展開されていきます。第2主題はアレグレット・スケルツァンド、ト短調で提示されます。第2主題の音階的なパッセージが次第に拡大し、急速に下降する音形で半ば唐突に曲は閉じられます。

第2楽章

アンダンテ、変ハ長調、3/4拍子。第1楽章第1主題の要素から発展した主題で始まり、サクソフォーンのカデンツァへと続きます。カデンツァの末尾からは、第1楽章第2主題の変形が断片的に繰り返されるうちに12/8拍子のフーガ主題へと発展し、最終楽章へと移行します。

第3楽章

サクソフォーンで提示されたフーガ主題は弦楽器に引き継がれ、次いで第2楽章の主題も組み合わされて対位法的なテクスチュアが織りなされます。これまでに現れた主題の再現と回顧が繰り返されるうちに、第1楽章第1主題の要素が優勢となり、曲が閉じられます。

外部リンク

アルト・[[サクソフォーン]]と弦楽オーケストラのための協奏曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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