アルフォンソ・ダラゴーナ (ビシェーリエ公)

アルフォンソ・ダラゴーナの生涯：政略と悲劇

アルフォンソ・ダラゴーナ（Alfonso d'Aragona, 1481年 - 1500年8月18日）は、南イタリアのナポリ王国の王族として生まれました。父はナポリ王アルフォンソ2世で、母は側室のトロージャ・ガッツェラです。彼は教皇アレクサンデル6世の娘であるルクレツィア・ボルジアの2番目の夫となり、ボルジア家の政略に巻き込まれて悲劇的な運命を辿りました。ビシェーリエ公爵、サレルノ公の称号を持っていました。

幼少期と教育

アルフォンソは、父アルフォンソ2世と側室トロージャ・ガッツェラの間に生まれた非嫡出子でした。幼い頃から、ナポリ宮廷に仕える学者ジュニアーノ・マイオによって、高度な人文主義教育を受けました。父アルフォンソ2世は1494年に即位しましたが、翌1495年にはフランス軍がナポリを占領したため、嫡出子のフェルディナンド2世に王位を譲り、シチリア島へと逃亡しました。フェルディナンド2世も1496年に亡くなり、1497年に叔父のフェデリーコ1世がアラゴン王フェルナンド2世の支援を受けてナポリの支配を回復すると、アルフォンソは王家の成員としてアブルッツォ州統監の要職に就きました。

政略結婚

教皇アレクサンデル6世は、アラゴン連合王国とナポリ王国のアラゴン家との同盟を強化するため、政略結婚を進めました。アルフォンソの同母姉サンチャが、すでに教皇の末息子ホフレ・ボルジアと結婚していました。教皇は次に、長男チェーザレ・ボルジアとナポリ王フェデリーコの嫡出娘シャルロットとの縁組を望みましたが、シャルロットは庶子との結婚を拒否しました。この破談の補償として、フェデリーコ王は17歳の甥アルフォンソと、教皇の18歳の娘ルクレツィアとの縁組を提案しました。

1498年7月15日、アルフォンソは変装してローマに入り、7月21日にヴァチカンでルクレツィアと結婚しました。結婚後、アルフォンソには叔父のナポリ王からサレルノ地方の都市やビシェーリエからの収入が与えられ、ルクレツィアには父教皇から4万ドゥカーティの持参金が用意されました。この取り決めでは、夫妻は結婚後1年間はローマに留まること、そしてルクレツィアは教皇の存命中、夫の故国ナポリ王国に住む義務がないとされました。教会史家フェルディナント・グレゴロヴィウスによれば、アルフォンソは「魅力的で誰からも好かれる若者」であり、「聖都に住む人々が出会った中で最も端正な顔立ちをした青年」でした。ルクレツィアが彼に夢中になったことは、その魅力を物語っています。1499年2月、ルクレツィアは初めて授かったアルフォンソの子を流産しましたが、すぐに再び妊娠しました。

裏切りと逃亡

しかし、アレクサンデル6世は、アルフォンソの一族であるアラゴン家の敵であるフランスと手を組み始め、チェーザレ・ボルジアをフランスのナバラ王フアン3世の妹シャルロット・ダルブレと結婚させました。フランスがナポリに侵攻しようとしていることを知ったアルフォンソは、ボルジア家に裏切られたと感じ、1499年8月2日、妊娠中の妻ルクレツィアを置いてローマを離れました。教皇はアルフォンソの出奔に激怒し、追手を差し向けましたが、発見できませんでした。一方、ルクレツィアはこの時期にスポレートとフォリーニョの総督職を教皇から与えられ、アルフォンソが夫婦関係における監督権を持っていなかったことを示しています。結局、アルフォンソはジェナッツァーノに潜伏していることが、ルクレツィアに送った手紙から発覚し、ボルジア家はルクレツィアに説得させ、アルフォンソをローマに連れ戻しました。夫婦は1499年9月にヴァチカンに戻り、10月31日または11月1日に男児ロドリーゴを出産しました。

暗殺

1500年7月15日、アルフォンソはサン・ピエトロ大聖堂の階段で雇われた刺客に襲撃され、頭部、右腕、右脚に重傷を負いました。犯人たちは負傷したアルフォンソを連れ去ろうとしましたが、護衛に阻止されました。アルフォンソはボルジア塔の一室で手厚い看護を受けましたが、8月18日の夜、チェーザレ・ボルジアの腹心ミケレット・コレッラ率いる武装集団に襲撃され、ベッドの上で絞殺されました。彼の遺体は、サン・ピエトロ大聖堂に隣接するサンタ・マリーア・デッラ・フェブレ教会に安置されました。

この暗殺事件は、フランスのナポリ遠征を背景として発生し、チェーザレ・ボルジアが黒幕として非難されましたが、真相は謎に包まれています。チェーザレは、庭を散歩中にアルフォンソが自分をクロスボウで射殺しようとしたと主張しましたが、ほとんどの人が作り話だと信じませんでした。アルフォンソがコロンナ家と親しかったことから、オルシーニ家が犯人である可能性や、アルフォンソの母方叔父ジョヴァンニ・マリア・ガッツェラが黒幕である可能性も指摘されています。また、教皇アレクサンデル6世が、アルフォンソとのトラブルから暗殺を命じた可能性も考えられています。

その後

未亡人となったルクレツィアは、2年後の1502年にモデナ＝レッジョ公アルフォンソ1世・デステに再婚しました。その際、初婚に見せるよう求められたため、アルフォンソとの間の一人息子ロドリーゴ・ダラゴーナを置いていかねばなりませんでした。ロドリーゴは伯母のミラノ公爵未亡人イザベッラ・ダラゴーナの元で養育されましたが、12歳で病死しました。

アルフォンソ・ダラゴーナの生涯は、当時の複雑な政治情勢とボルジア家の権謀術数の犠牲になった悲劇として、歴史に刻まれています。

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