アルフォンソ・ポルティージョ

アルフォンソ・ポルティージョ：汚職にまみれたグアテマラ元大統領

アルフォンソ・アントニオ・ポルティージョ・カブレラ（Alfonso Antonio Portillo Cabrera、1951年9月24日 - ）は、グアテマラの政治家であり、2000年から2004年まで同国の大統領を務めました。しかし、彼の政権は深刻な汚職によって悪名高く、退任後には裁判にかけられることとなりました。

経歴

ポルティージョはサカパ県サカパで生まれ、メキシコのゲレーロ自治大学(UAG)で法学・社会科学を学びました。その後、メキシコ国立自治大学(UNAM)で経済学の博士号を取得し、母校で准教授として教鞭を執りました。

1989年にグアテマラへ帰国後、当初は左派の社会民主党(PSD)に、後にキリスト教民主党(DCG)に所属し、1994年にグアテマラ議会の議席を獲得しました。1995年に党が分裂すると、ポルティージョはキリスト教民主党を離れ、エフライン・リオス・モントが党首を務めるグアテマラ共和戦線(FRG)へ移籍しました。リオス・モントは、1982年から1983年にかけてクーデターで政権を掌握し、主に先住民マヤ人に対する大量虐殺を行ったことで悪名高い人物ですが、当時のグアテマラ国内、特に地方では根強い人気がありました。

グアテマラ共和戦線は、1990年と1995年の大統領選挙で党首であるリオス・モント自身を大統領候補として擁立しようとしましたが、過去にクーデターを起こした人物の大統領就任は憲法で禁じられていたため、最高選挙裁判所(TSE)はリオス・モントの立候補を認めませんでした。そのため、1995年11月の大統領選挙では、グアテマラ共和戦線はポルティージョを候補者として擁立しましたが、決選投票でアルバロ・アルスに僅差で敗れました。

大統領時代

1999年11月の大統領選挙で、グアテマラ共和戦線は再びポルティージョを候補者として擁立しました。ポルティージョは、政治倫理の確立、汚職との戦い、先住民の擁護、市民の安全確保などを公約に掲げ、選挙に勝利し、2000年1月14日に大統領に就任しました。議会でもグアテマラ共和戦線が絶対多数を占め、リオス・モントはグアテマラ議会の議長に選出されました。

ポルティージョ大統領は2001年5月に日本を訪問しました。グアテマラ内戦の和平合意後、日本はアメリカ合衆国と並んで、グアテマラに対する最大の援助国となっていました。

しかし、公約とは裏腹に、ポルティージョ政権下では汚職がかつてない規模にまで拡大しました。2000年8月には、酒造業界と癒着したリオス・モントらの議員が、密かに酒税を引き下げる事件が発生しました。この事件はスキャンダルとなりましたが、議員らが有罪判決を受けることはありませんでした。

和平合意の結果、付加価値税が12%に引き上げられることになり、このことが経済界や市民団体との対立を招きました。2001年には、選挙公約違反に対する抗議運動が起こりました。大統領就任から2年後の世論調査では、政権を「支持しない」と回答した人の割合が82%に達しました。

2002年2月のアムネスティ・インターナショナルの報告書では、1996年のグアテマラ内戦和平協定から5年以上が経過しているにもかかわらず、協定の人権に関する部分が実現されていないと批判しました。また、当時のグアテマラが伝統的なオリガルキア（寡頭支配層）、新興企業家、軍と警察、犯罪者からなる「穢れた同盟」、いわゆる「マフィア国家」と化していることを指摘しました。

過去の暗殺事件については、多少の進展が見られました。1998年にフアン・ヘラルディ元司教が暗殺された事件については、2001年に軍人2名と聖職者1名の3名が有罪判決を受けました。1990年のミルナ・マック暗殺事件については、すでに実行犯であるノエル・デ・ヘスス・ベテタが有罪判決を受けて収監されていましたが、殺害命令を出した上官のフアン・バレンシア・オソリオについても、2002年に懲役30年の判決が下されました。しかし、バレンシアは逃亡しました。

2003年の大統領選挙で、グアテマラ共和戦線は最高選挙裁判所を動かし、ついにリオス・モント本人の立候補を認めさせました。他の党からの抗議によって最高裁判所がリオス・モントの出馬を差し止めると、7月24日にグアテマラシティで数千人ものリオス・モント支持者が覆面で武装し、反対派本部などを襲撃する事件が起きました。この事件は「黒い木曜日」と呼ばれています。最終的にリオス・モントの立候補は認められましたが、グアテマラ共和戦線の強引なやり口と汚職が嫌われ、3位に終わりました。選挙は国民大連合(GANA)のオスカル・ベルシェが勝利し、2004年1月14日に次期大統領に就任しました。

逮捕と裁判

ベルシェ政権の調査によると、ポルティージョ時代には汚職や横領によって国庫から10億ドル以上が失われていました。

ポルティージョ本人は2004年からメキシコに滞在していましたが、グアテマラ政府からの要求により、2008年10月7日にメキシコからグアテマラに身柄を引き渡されました。ポルティージョの妻であるマリア・エウヘニア・ゴンサレスは、メキシコのゲレーロ州チルパンシンゴの自宅で2010年5月18日に自殺しました。1億2000万ケツァル（約1500万ドル）の公金横領で訴えられましたが、2011年5月に証拠不十分として無罪判決が言い渡されました。

一方、アメリカ合衆国は資金洗浄の容疑でポルティージョの引き渡しを求めました。ポルティージョは2010年1月26日にイサバル県で逮捕され、2013年5月24日にアメリカ合衆国に身柄が引き渡されました。公判においてポルティージョは、台湾との外交関係を維持する見返りに250万ドルの賄賂を受け取ったことを認めました。2014年5月、ニューヨーク州南部連邦裁判所はポルティージョに懲役70か月の判決を下しましたが、すでに52か月勾留されていたため、18か月で出所する見込みとされました。

2015年2月に刑期を終えて帰国し、みんなの党(TODOS)から議員選挙に出馬しようとしましたが、最高選挙裁判所は彼の立候補を却下しました。

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