オルケゾグラフィ

オルケゾグラフィ

『オルケゾグラフィ』（Orchesographie）は、1589年にトワノ・アルボ（Thoinot Arbeau）というペンネームで、ジュアン・タブロ（Jehan Tabourot）によって出版された、ダンスに関する重要な書籍です。初版は1588年に勅許を得ており、著者の死後も再版を重ね、1878年以降も数多くの版が出版されています。

概要

この書籍は、16世紀のダンスの実態を知る上で、最も詳細かつ完全な資料として評価されています。特に注目すべきは、楽曲に合わせてダンスのステップを詳細に記録した、最初期の手引書である点です。21曲もの舞曲の楽譜が掲載されており、当時の音楽とダンスの関係を具体的に示しています。また、打楽器に関する初期の指導書としての側面も持っています。

『オルケゾグラフィ』は、良家の子女がダンスのステップや作法を学ぶための教育書としての役割を果たしました。取り上げられているダンスは、中世以前の書物に見られるものとは異なり、より洗練されたスタイルが特徴です。教育書というジャンルにおいても、初期の重要な例の一つと言えるでしょう。

構成

本文は、Capriolというダンス技術に未熟な若い宮廷人が、指導者であるアルボ（Arbeau）に教えを請う対話形式で書かれています。この形式により、読者は楽しみながらダンスの知識を深めることができます。

収録されているダンス

書籍には、当時の様々なダンスが収録されています。バスダンス（Basse-Danse）のように「もう古くて踊られないもの」も含まれていますが、パヴァーヌ（シャンソン「Belle qui tiens ma vie」が例として挙げられています）、アルマンドの列を作っての舞踏、トゥルディオン、ガイヤルド、ヴォルタ、クーラント、各種のブランル、ガヴォット、モリスク（モレスカ）、カナリー、スペインのパヴァーヌ、ブフォンなど、多岐にわたるダンスが紹介されています。

後世への影響

『オルケゾグラフィ』は、20世紀以降の音楽にも影響を与えました。イーゴリ・ストラヴィンスキーのバレエ音楽『アゴン』や、ピーター・ウォーロック（同書の英訳を一部担当）の『カプリオール組曲』は、この書籍に基づいて作曲されています。これらの作品は、『オルケゾグラフィ』が単なる歴史的な資料にとどまらず、現代の芸術にも影響を与え続けていることを示しています。

出版情報（一部）

1589年: 初版（ラングル、Jehan des Preyz）
1596年: 改訂版（ラングル、Jehan des Preyz）
1878年: ドイツ語版（Albert Czerwinski編）
1888年: フランス語再版（Laure Fontaによる序文付き）
1925年: 英語訳（Cyril W. Beaumont訳）
1946年: スペイン語訳

その他、多数の復刻版や翻訳版が出版されています。

外部リンク

オルケゾグラフィ全ページのファクシミリ(Library of Congress)
オルケゾグラフィ文章の全文（テキスト）
インターネット・ダンス・データベース
CPDL の譜例

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