アルマン・セガン

アルマン・セガン（Armand Félix Abel Seguin, 1869年4月15日 - 1903年12月30日）は、19世紀末のフランスで活躍した画家です。彼は、ポール・ゴーギャンをはじめとする多くの画家たちとともに、ブルターニュ地方のポン＝タヴァンで活動した「ポン＝タヴァン派」の重要な一員として知られています。また、「ナビ派」の画家たちの展覧会にも作品を出展するなど、当時の美術界において注目を集めました。

セガンはパリの実業家の家庭に生まれました。彼の祖父は、皮革産業に重要な発見をもたらした化学者・薬剤師のアルマン・ジャン・フランソワ・セガン（Armand Jean François Séguin, 1767-1835）です。セガンは、パリのエコール・デ・ボザールやアカデミー・ジュリアンで美術を学びました。この時期に、アンリ＝ガブリエル・イベルスやアンリ・ド・グルーといった画家たちと親交を深め、ポール・セリュジエとも知り合い、彼らを通じて「綜合主義」（サンテティスム）の影響を受けることになります。1888年には、カフェ・ヴォルピーニで開催された「印象主義および綜合主義グループ」展でゴーギャンの作品に触れ、強い感銘を受けました。これがきっかけで、セガンはゴーギャンに師事し、ブルターニュ地方を訪れるようになります。

ポン＝タヴァンでは、ゴーギャンの指導のもと、シャルル・ラヴァル、エミール・ベルナール、ロドリック・オコナー、シャルル・フィリジェ、アンリ・モレ、エミール・ジュールダンといった画家たちからも影響を受け、自身の画風を確立していきました。また、ポール・セリュジエが中心となって結成した美術家グループ「ナビ派」の展覧会にも参加し、活動の幅を広げました。

セガンの作品は、「ポスト印象派」のスタイルを基調としつつ、「象徴主義」的な要素も含まれています。1890年代には、ブルターニュの風景や人物を多く描きましたが、その後、文学作品を題材としたり、パリの女性の姿を描くなど、幅広いテーマに挑戦しました。彼は、1893年にアンデパンダン展に出展し、1895年にはパリで個展を開催し、成功を収めました。また、木版画や銅版画などの版画作品も制作し、書籍の挿絵も手掛けるなど、多才な才能を発揮しました。さらに、日記を書き続け、ポン＝タヴァン派の歴史について雑誌「L'Occident」に記事を寄稿するなど、美術評論家としての側面も持ち合わせていました。

しかし、多くのポン＝タヴァン派の芸術家たちと同様に、セガンもアルコール依存症に苦しみました。1903年、肺炎を患い、わずか34歳という若さでこの世を去りました。短い生涯ではありましたが、彼はその才能と情熱によって、19世紀末のフランス美術史に確かな足跡を残しました。

彼の作品は、色彩と構図に特徴があり、ブルターニュの風景や人物を情感豊かに描き出しています。ポスト印象派と象徴主義の融合は、独特の雰囲気と芸術性を生み出し、今日においても多くの人々を魅了し続けています。

セガンに関する参考文献としては、以下のものが挙げられます。

Peter H. Feist e.a.: Armand Séguin, 1869-1903 (samenstelling Ingo F. Walther), Taschen, München, 2010. ISBN 9783836522908
Richard S. Field: The prints of Armand Seguin, 1869-1903. Davison Art Center, Wesleyan University, Middletown, Connecticut.

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