綜合主義

綜合主義とは

綜合主義（そうごうしゅぎ）は、1880年代末頃、ポール・ゴーギャン、エミール・ベルナール、シャルル・ラヴァル、ルイ・アンクタンらによって提唱された芸術運動です。フランス語の「Synthétisme（サンテティスム）」の訳語であり、ポスト印象主義の一潮流として位置づけられます。印象主義が色彩を細かく分割して表現するのに対し、綜合主義は、より単純化された色彩と形態を用いることを特徴とします。

印象主義への反発

印象主義は、光の表現に重点を置き、感覚で捉えた外界を忠実に画面に再現しようとしました。しかし、綜合主義の画家たちは、絵画に思想的、哲学的な内容を盛り込むことを重視し、印象主義の客観的な描写に反発しました。1889年には、ゴーギャンらはパリ万国博覧会の会場で「印象主義および綜合主義グループ」展を開催しましたが、実際には印象主義とは異なる、反印象主義的な内容でした。

形態と色彩の単純化

綜合主義は、印象主義の色彩分割とは対照的に、強く太い輪郭線で対象の形態を捉え、平坦な色面で画面を構成します。この手法は「クロワゾニスム」と呼ばれ、綜合主義とほぼ同義で使われることもあります。クロワゾニスムは、対象を単純化することで、より象徴的、抽象的な表現を可能にしました。

主観と客観の綜合

綜合主義は、単なる形態や色彩の単純化だけでなく、主観や思想との融合を意味します。画面上の造形要素の秩序を重んじながら、精神的な価値を盛り込もうとする点が特徴です。外なる世界（感覚）と内なる世界（想像力）を綜合することで、より深い意味を持つ作品を生み出そうとしました。

ゴーギャンの代表作である『説教の後の幻影』は、クロワゾニスムの手法を用い、現実の世界と幻影の世界を一つの画面に統合しています。この作品は、綜合主義の理念を具現化した傑作とされています。

綜合主義の影響

綜合主義の思想は、ゴーギャンに影響を受けたナビ派の画家たちに引き継がれました。ナビ派の画家モーリス・ドニは、「分析の精神に対する綜合の精神の勝利、感覚に対する想像力の勝利、自然に対する人間の勝利」と綜合主義の本質を説明しています。また、ポール・セリュジエは「綜合とは、あらゆる形態を、我々が思考することのできるわずかの数の基本的形態、例えば直線とか、何種類かの角度とか、円または楕円の弧とかいうものの中に押し込めてしまうことをいう」と述べています。

綜合主義は、その後の芸術運動に大きな影響を与え、抽象表現の発展に貢献しました。

参考文献

高階秀爾『世紀末芸術』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2008年。ISBN 978-4-480-09158-1。

関連項目

クロワゾニスム
ポン＝タヴァン派
ナビ派

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