アル・コーン

アル・コーン：ジャズ・サックスの巨匠

アル・コーン（Al Cohn, 1925年11月24日 - 1988年2月15日）は、アメリカが生んだ偉大なジャズ・サックス奏者であり、作曲家、そして編曲家としても多大な功績を残しました。本名をアルヴィン・ギルバート・コーンといい、その音楽人生は、ジャズの歴史に深く刻まれています。

ウディ・ハーマン楽団と「フォー・ブラザーズ」

1940年代、アル・コーンはズート・シムズ、スタン・ゲッツ、サージ・チャロフらと共に、ウディ・ハーマン楽団の第二期を支えた「フォー・ブラザーズ」の一人として脚光を浴びました。特に、ズート・シムズやスタン・ゲッツと並び称される一方で、編曲家としてもその才能を発揮し、楽団の音楽性を豊かに彩りました。

ズート・シムズとの輝かしい共演

ウディ・ハーマン楽団を離れた後も、アル・コーンは多岐にわたるアーティストとの共演を重ねましたが、中でも特筆すべきは、かつての「フォー・ブラザーズ」の仲間、ズート・シムズとの長きにわたる協力関係です。1956年からは共同でクインテットを率い、1950年代にはピアニストのモーズ・アリソンを迎え、数々の名演を繰り広げました。ズート・シムズが亡くなるまで、二人は折に触れて共演を続け、その録音活動の頂点とも言えるのが、スタンダード曲と自作曲を織り交ぜたアルバム『ユー・エン・ミー』（マーキュリー・レコード、1960年発表）です。また、二人は作家ジャック・ケルアックの録音にも参加するなど、音楽の枠を超えた活動も展開しました。

編曲家としての才能

アル・コーンは、テナー・サックス奏者としての活動と並行して、編曲家としても高く評価されました。ブロードウェイの舞台のために『レーズン』や『ソフィスティケイティッド・レイディーズ』の編曲を手がけ、その才能を遺憾なく発揮しました。さらに、リンダ・ロンシュタットの1980年代以降の未発表音源にも、アル・コーンが編曲を手がけた作品が含まれていることは、彼の幅広い音楽性を物語っています。

マリリン・ムーアとの結婚と晩年

ジャズ・シンガーのマリリン・ムーアのアルバム『ムーディー』にソリストとして参加したことをきっかけに、ムーアと結婚し、息子ジョーをもうけましたが、後に離婚しました。1988年、アル・コーンはペンシルヴェニア州ストラウズバーグにて、肝癌のため62歳でこの世を去りました。

アル・コーンの音楽は、その卓越した演奏技術と、時代を超えて愛される美しいメロディ、そして洗練されたアレンジによって、今もなお多くの人々を魅了し続けています。彼の残した音楽遺産は、これからもジャズファンのみならず、音楽を愛するすべての人々の心に響き続けることでしょう。

代表的なディスコグラフィー

『コーンズ・トーンズ』 - Al Cohn's Tones (1950年)
『ミスター・ミュージック』 - Mr. Music (1955年)
『ユー・エン・ミー』 - You 'n' Me (1960年、ズート・シムズとの共作)
『スタンダーズ・オブ・エクスレンス』 - Standards of Excellence (1984年)

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