アレクサンドリアの聖カタリナ (カラヴァッジョ)

アレクサンドリアの聖カタリナ（カラヴァッジョ）

イタリアのバロック期を代表する画家、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョが1598年から1599年にかけて制作した油彩画『アレクサンドリアの聖カタリナ』は、マドリードのティッセン＝ボルネミッサ美術館に所蔵されています。この作品は、カラヴァッジョの独特な写実性とドラマティックな表現が際立つ傑作として知られています。

歴史と概要

この絵画は、フランチェスコ・マリア・デル・モンテ枢機卿のコレクションの一部として、1627年の目録に記録されました。聖カタリナは枢機卿が特に好んだ聖人の一人であり、マグダラのマリアと並んで重要な存在でした。アレッサンドロ・ツッカリの証言によると、この作品はカラヴァッジョがマダーマ宮で枢機卿と同居していた時期に、枢機卿の提案によって描かれたとされています。

モデルとスキャンダル

聖カタリナのモデルとして、カラヴァッジョは当時有名なローマの売春婦であったフィリーデ・メランドローニを選びました。これは当時大きな物議を醸しました。カラヴァッジョはメランドローニに恋をし、このことが多くの問題を引き起こしたと伝えられています。彼女は他にも、『マルタとマグダラのマリア』や『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』など、カラヴァッジョの複数の作品でモデルを務めており、画家のミューズとして重要な存在でした。

聖カタリナの物語

アレクサンドリアの聖カタリナは、カトリック教会の図像学において非常に人気のある聖人です。彼女は、美しさ、勇気、処女性、知性を兼ね備えた人物として描かれます。高貴な家柄に生まれたカタリナは、宗教的な幻視を経験した後、キリスト教に身を捧げました。18歳の時、ローマ皇帝マクシムス（おそらくガレリウス・マクシミアヌス）に異教の哲学者たちとの論争を挑み、見事に論破して多くをキリスト教に改宗させました。彼女は皇帝によって投獄されますが、皇后や軍の指導者までも改宗させてしまいます。怒った皇帝は、改宗者たちを処刑し、カタリナを車裂きの刑に処そうとしましたが、彼女が車輪に触れた瞬間に車輪が砕け散ったと伝えられています。最終的に、カタリナは斬首刑に処せられました。

聖カタリナの象徴と影響

聖カタリナは、図書館員、教師、記録保管人、そして知恵と教育に関連するすべての人々の守護聖人とされています。また、生計が車輪に依存していた人々にとっても重要な聖人です。彼女の殉教は伝統的に305年とされ、祝祭日は11月25日と定められています。

歴史的評価の変化

1969年、カトリック教会は聖カタリナを聖人暦から削除しました。これは、彼女の存在を疑問視する歴史家の見解に同調したものでした。しかし、2002年に教会は考えを改め、聖カタリナは再び聖人として認められることになりました。現在でも歴史家の間では意見が分かれていますが、カトリック教会では彼女を重要な聖人として崇敬しています。

作品の解釈

カラヴァッジョの描く聖カタリナは、美しくも毅然とした表情で描かれています。彼女の持つ車輪は殉教を象徴し、その赤い衣服は聖人としての地位を表しています。光と影を巧みに操るカラヴァッジョの技法によって、カタリナの姿はより一層、劇的に表現されています。

関連作品

アレクサンドリアの聖カタリナ（ラファエロ）

脚注

カトリック百科事典の聖カタリナ（1913年版）/St._Catherine_of_Alexandria)

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