アレコ

ラフマニノフのオペラ『アレコ』

『アレコ』（ロシア語: Алеко）は、セルゲイ・ラフマニノフがモスクワ音楽院の卒業作品として1892年に作曲した1幕もののオペラです。原作はアレクサンドル・プーシキンの物語詩『ジプシー』、台本はウラディーミル・ネミローヴィチ＝ダンチェンコが手がけました。演奏時間はおよそ59分半。

物語は、ジプシーの娘に恋をした貴族の青年アレコが、娘の浮気が許せず、相手の男とともに娘を殺害してしまうという悲劇です。

作曲の経緯

1892年4月3日（ユリウス暦3月22日）、モスクワ音楽院の作曲科でアントン・アレンスキーに師事していたラフマニノフを含む3人の学生に、卒業制作として1幕物のオペラの台本が与えられました。他の学生はニキータ・モロゾフとレフ・コニュスです。彼らは4月19日（4月7日）までにオペラを作曲するよう指示されました。

ラフマニノフは台本を受け取るとすぐに作曲に取り掛かりました。作曲当日、父親が客人を連れてきて落ち着かない状況でしたが、翌朝から集中して作業を進め、4月6日（3月25日）には全曲を完成させました。そして、5月19日（5月7日）に卒業試験として自ら演奏し、見事金メダルを授与されました。

上演の歴史

1893年5月9日（4月27日）には、チャイコフスキーの尽力により、モスクワのボリショイ劇場にて、アリターニの指揮で初演を迎えました。チャイコフスキーはリハーサルにも立ち会い、本番では聴衆をリードして喝采を送りました。ラフマニノフは後に、初演の成功はチャイコフスキーの喝采のおかげだと語っています。この初演には、ラフマニノフの父と祖母も駆けつけました。

同年10月には、ラフマニノフ自身の指揮でキエフ初演が行われました。これは彼にとってオペラ指揮者としてのデビューとなりました。彼はこの公演のために、サンクトペテルブルクで行われたチャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』の初演に立ち会うことができませんでした。キエフとサンクトペテルブルクへ向かう直前、モスクワで互いの成功を祈って言葉を交わしたのが、2人の最後の別れとなりました。

1899年6月8日（5月27日）には、プーシキン生誕100年を記念して、ラフマニノフ自身の指揮によりサンクトペテルブルク初演が行われ、フョードル・シャリアピンが主役のアレコを演じました。シャリアピンは、サヴァ・マモントフが主催する私設オペラでラフマニノフと出会って以来の盟友であり、生涯に10度もアレコ役を演じました。中でも「アレコのカヴァティーナ」は彼の代表的なレパートリーとなり、2度録音も行っています。

その後、『アレコ』はロシア・オペラのレパートリーとして定着し、主にワークショップやアマチュア劇団によって上演されています。1977年には、モスクワ・アカデミー音楽劇場歌劇団によって大阪で日本初演を迎えました。

楽器編成

ピッコロ
フルート2
オーボエ2
イングリッシュホルン
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
チューバ
トライアングル
タンブリン
シンバル
大太鼓
ハープ
弦5部

登場人物

アレコ：青年（バリトン）
ゼムフィーラ：ジプシーの娘（ソプラノ）
若いジプシー（テノール）
老ジプシー：ゼムフィーラの父（バス）
ジプシーの老婆（メゾソプラノ）
ジプシーたち（合唱）

あらすじ

物語の舞台は19世紀初頭の南ベッサラビアにあるジプシーの野営地です。

1. 序奏
2. 合唱
3. 老人の物語
4. 情景と合唱
5. 女の踊り
6. 男たちの踊り
7. 合唱
8. 小二重唱
9. ゆりかごの情景
10. アレコのカヴァティーナ
11. 間奏曲
12. 若いジプシーのロマンス
13. 二重唱と終曲

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