アレッポ攻囲戦 (1260年)

アレッポ攻囲戦：1260年の悲劇

1260年1月18日から24日にかけて発生したアレッポ攻囲戦は、モンゴル帝国の拡大と、近隣勢力の抗争が複雑に絡み合った悲劇的な出来事でした。この戦闘は、モンゴルの指導者フレグによるアレッポへの侵攻によって勃発しました。

モンゴルの侵攻

フレグは、事前にハッラーンとエデッサを制圧。ユーフラテス川を渡河し、マンビジを略奪した後、アレッポを包囲しました。アレッポ防衛側は、アルメニア王国とアンティオキア公国の連合軍によって支えられていましたが、圧倒的なモンゴル軍の戦力の前には無力でした。

6日間の攻防と凄惨な虐殺

6日間にわたる激しい攻防の後、アレッポは陥落しました。モンゴル軍は市街を制圧し、徹底的な破壊と虐殺を行いました。ムスリムとユダヤ人の住民の大半が殺害され、多くの女性と子どもたちは奴隷として売られました。アレッポの大モスクも炎上するなど、文化遺産も甚大な被害を受けました。この虐殺は、組織的で徹底的なものであり、その残虐性は歴史に暗い影を落としています。

モスク炎上とその後

攻囲戦後、フレグはアルメニア王国の軍の一部にモスクの破壊を命じたと伝えられています。一部の記録では、アンティオキア公国のボエモン6世が自らモスクの破壊を目撃したと主張する記述もあります。この行為は、宗教的な破壊行為としてだけでなく、アレッポ住民への屈辱と恐怖を象徴するものでした。

攻囲戦後、フレグは以前アイユーブ朝に奪われていた領地と城塞を、アルメニア王ヘトゥム1世に返還しました。これは、モンゴルによる戦略的な同盟関係構築の一環であったと考えられます。しかし、アレッポでの残虐行為は、モンゴル帝国の残忍性を世界に示すこととなり、その後の歴史に大きな影響を与えました。

歴史的意義

アレッポ攻囲戦は、モンゴル帝国の西アジアへの進出、そして十字軍国家や周辺勢力との関係に大きな変化をもたらしました。この戦闘は、中世における戦争の残酷さと、宗教、民族間の対立がもたらす悲劇を改めて私たちに示しています。また、アレッポが受けた被害は、都市の文化と歴史に深い傷跡を残しました。

参考文献

Grousset, René (1991). The Empire of the Steppes: A History of Central Asia. Rutgers University Press
Riley-Smith, Jonathan; Christopher, Simon; Edbury, Peter W.; Phillips, Jonathan P. (2003). The Experience of Crusading. 1. Cambridge University Press

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