アレトペルタ

アレトペルタ：漂流した盾竜

アレトペルタ（Aletopelta coombsi）は、白亜紀後期（約7550万年前）の北米大陸に生息していた曲竜類に属する恐竜です。化石はアメリカ合衆国、カリフォルニア州南部で発見されました。

発見と命名

1987年、カリフォルニア州カールスバッド近郊での建設作業中に、ブラッドフォード・ライニーによって化石が発見されました。この発見はすぐにサンディエゴ自然史博物館によって保護され、1988年にトーマス・デマレによって報告されました。この地域で初めて発見された鎧竜類の化石として、「カールスバッドのアンキロサウルス類」と呼ばれ、大きな注目を集めました。1996年には、デマレとウォルター・プレストン・クームスによって詳細な記載がなされましたが、当時はまだ正式な学名は与えられていませんでした。

2001年、トレイシー・リー・フォードとジェームズ・カークランドによって、模式種Aletopelta coombsiとして正式に命名・記載されました。属名は古代ギリシャ語の「漂流する」を意味する「ἀλήτης (alethes)」と「盾」を意味する「πέλτη (pelte)」を組み合わせたもので、「漂流する盾」という意味を持ちます。これは、化石が発見された場所がかつてメキシコ中央部に位置し、その後の地殻変動によって北へ移動してきたという地史に由来します。種小名は、曲竜類研究の第一人者であり、多くの古生物学者に影響を与えたウォルター・プレストン・クームス・ジュニアへの献名です。

化石

アレトペルタの化石は、ホロタイプ標本SDNHM 33909として知られる、頭骨を欠く単一の部分骨格のみです。この標本は、橈骨、尺骨、上腕骨、肩甲骨、大腿骨、脛骨、腓骨、腸骨、脊椎、肋骨、骨盤帯を覆う部分的な装甲、頸部のハーフリング、少なくとも16個の遊離した装甲板、そして8本の歯で構成されています。これらの化石は、海成層であるポイントロマ層（カンパニアン後期）から発見されました。化石の状態から、アレトペルタの死骸は膨張して海面を漂流した後、背を下にして海底に沈み、軟体動物が付着するなどして、小さな魚礁のような環境を形成したと考えられています。また、サメによる食痕も見られることから、死骸は他の生物によっても利用された可能性があります。しかし、大半の骨は関節面を失い、内部が空洞化するなど、保存状態は良好とは言えません。

記載

アレトペルタは中型のアンキロサウルス類で、全長は約5〜6メートル、体重は約2トンと推定されています。しかし、ホロタイプの損傷が激しいため、その正確な特徴を把握することは困難です。そのため、一部の研究者からは疑問名として扱われることもあります。

系統発生

アレトペルタは、皮骨の形状と配置がノドサウルス科よりもアンキロサウルス科に類似していることから、アンキロサウルス科に分類されると考えられています。しかし、化石の保存状態が悪く、詳細な特徴が不明なため、系統的な位置づけは未だ議論の余地があります。

アレトペルタは、その特異な発見の経緯と、地史的な背景を反映した属名が示すように、非常に興味深い恐竜です。今後の研究によって、その生態や進化における位置づけがさらに解明されることが期待されます。

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