アレルギー性紫斑病

アレルギー性紫斑病について

アレルギー性紫斑病は、血管に炎症が生じることで、全身に様々な症状が現れる病気です。特に皮膚に特徴的な紫色のあざ（紫斑）が現れることが多く、腹痛や関節の痛み、さらには腎臓に影響が及ぶこともあります。この病気は「アナフィラクトイド紫斑病」「血管性紫斑病」「IgA血管炎」「ヘノッホ・シェーンライン紫斑病」など、様々な名称で呼ばれています。多くの場合、4歳から7歳くらいの子供に発症しやすく、男女差はほとんどありません。

原因

この病気の詳しい原因はまだ完全に解明されていません。しかし、多くの場合、ウイルスや細菌による感染症、特にA群β溶血性連鎖球菌（溶連菌）による感染症が先行することが知られています。風邪のような症状の後で発症することもよく見られます。その他、特定の薬剤や食べ物が発症に関与している可能性も指摘されています。

病態

病気が起こる仕組みとしては、体の免疫システムの異常が強く関わっていると考えられています。特に、IgAという種類の抗体が過剰に作られたり、免疫複合体という特殊な物質が形成されたりすることが報告されています。これらのIgAを含む免疫複合体が血管の壁に沈着することで炎症が引き起こされ、血管が傷つきやすくなったり、血液の成分が血管の外にもれやすくなったりします。その結果、皮膚に出血して紫斑ができたり、臓器がむくんだりする症状が現れると考えられています。

主な症状

アレルギー性紫斑病の主な症状は以下の通りです。

発疹（紫斑）
体の特に下肢や臀部を中心に、左右対称性に紫色のあざが現れます。ただのあざと異なり、少し盛り上がっていて触れることができる（palpable purpura）のが特徴です。新しい赤い紫斑から古くなった青紫色の紫斑まで混在し、形や大きさも様々です。血管が弱くなっているため、衣服との摩擦など些細な刺激でも小血管が破れて紫斑ができやすくなります。腕をきつく縛ると、その先に多数の紫斑が出現する「ルンペル・レーデ試験」が陽性になることがあります。

腹痛
腸管の血管にも炎症が起き、腸の壁がむくむことが痛みの主な原因と考えられています。時に非常に強い痛みを伴い、紫斑が現れる前に腹痛だけが現れることもあります。その場合、虫垂炎など他の病気と間違われることもあります。吐き気や嘔吐、便に血が混じることもあり、まれに腸が重なる腸重積という状態を合併することがあります。

浮腫（むくみ）
血管から水分がもれやすくなることで、体の一部がむくみます。特に手や足、顔など、紫斑ができやすい場所や関節の近くに起こることがあります。このような局所的なむくみは、血管性浮腫やクインケの浮腫と呼ばれることもあります。

腎炎
アレルギー性紫斑病にかかった人の20%から60%程度で、腎臓に炎症（紫斑病性腎炎）を合併するとされています。そのため、この病気と診断されたら、定期的に尿の検査を受けることが非常に重要です。尿に血が混じる（血尿）だけなら大きな問題にならないことが多いですが、タンパク尿が続いたり、血圧が高くなったりする場合は、腎臓の治療が必要になります。紫斑病性腎炎は、病理学的にはIgA腎症という別の病気とよく似ており、両者は同じ病気の一つの状態と考える意見もあります。

関節痛
特に下肢、その中でも膝の関節に痛みを伴うことがしばしばあります。ただし、関節自体が腫れることは少なく、一般的に関節の機能が損なわれたり変形したりすることはありません。

検査

アレルギー性紫斑病の診断では、他の病気との区別が重要です。紫斑が出る他の病気（例えば血小板減少性紫斑病、血友病、白血病など）や、腹痛の原因となる病気（虫垂炎、腸重積など）を除外するための検査が行われます。

血液検査
この病気の大きな特徴として、多くの血液検査項目が正常であることが挙げられます。特に、出血に関わる血小板の数や凝固機能（プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間）は通常異常を示しません。ルンペル・レーデ試験は陽性になることが多いです。先行する溶連菌感染がある場合、その抗体（ASLO抗体など）が高値を示すことがあります。

尿検査
腎炎の合併を確認するために行われます。血尿がよく見られますが、タンパク尿を伴うことは比較的少ないです。

腹部超音波検査
腹痛がある場合に行われます。腸管のむくみを確認したり、虫垂炎や腸重積、腸閉塞などの合併がないかを調べたりします。

* 細菌検査
先行する感染症、特に溶連菌の感染を確認するため、咽頭の培養検査などが行われることがあります。

治療

症状が皮膚の紫斑だけであれば、特別な治療はせず経過を見守ることが多いです。ただし、機械的な刺激で紫斑が悪化するため、安静にしておくことが大切です。また、腎炎の合併を防ぐため、定期的な尿検査は必ず行います。腹痛や関節痛が強く、日常生活が困難な場合は入院して治療が必要になります。炎症を抑えるために副腎皮質ステロイドが使われることが多く、特に腹痛を伴う場合は、お腹からの吸収が不安定なため点滴で投与されることが一般的です。もし溶連菌感染が確認されれば、抗生物質で除菌する治療も行われます。

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