アンソニー・ステファン

アンソニー・ステファン

アンソニー・ステファン（Anthony Steffen, 1930年7月21日 - 2004年6月4日）は、イタリアの映画俳優です。本名をアントニオ・ルイス・デ・テッフェ・フォン・ホーンホルツ（Antônio Luiz de Teffé von Hoonholtz）といい、特に1960年代後半から1970年代前半にかけて製作されたマカロニ・ウェスタンにおいて、27本という最多主演記録を持つことで知られています。

生い立ちと初期のキャリア

ステファンは、ブラジルの外交官であり元フォーミュラ1レーサーでもあったマヌエル・デ・テッフェ・フォン・ホーンホルツの息子として、ローマにあるブラジル大使館で生を受けました。彼の家系はドイツのプロイセンに起源を持つ由緒ある伯爵家、フォン・ホーンホルツ家に連なります。また、ブラジルのテフェ家という有力な家系も彼の曽祖父の代に遡り、ブラジル初の女性漫画家であるナイア・デ・テッフェ・フォン・ホーンホルツは大おばにあたります。第二次世界大戦中、彼はまだ10代でしたが、イタリア国内でパルチザンの一員としてナチス・ドイツと戦った経験を持っています。

戦後の1950年代、ステファンはアントニオ・デ・テッフェの名前でイタリアの映画制作現場で裏方としてキャリアをスタートさせました。その後、俳優としていくつかの作品に出演する機会を得ますが、当時のイタリア映画界で主役級のスターダムを確立するには至りませんでした。彼の出演が確認できる比較的初期の作品としては、1955年製作の『Gli Sbandati』があり、1962年には『Sodom and Gomorrah』で端役を演じています。

マカロニ・ウェスタンのスターへ

アンソニー・ステファンとしての名声は、1965年から1975年にかけての約10年間にわたるマカロニ・ウェスタンへの集中的な出演によって確立されました。この期間に彼は27本もの作品で主役やそれに準ずる重要な役を演じ、ヨーロッパ、特にイタリア国内で熱狂的なファンを獲得しました。その多くは寡黙で復讐心に燃えるアウトローやガンマンといった役柄であり、彼を「イタリアのクリント・イーストウッド」と称する向きもありました。しかし、その演技スタイルに対して「不器用な大根役者」といった不当な批判を受けることもあったと言われています。

彼の主演作の多くは、ヨーロッパ市場で高い興行成績を収めました。代表的な作品としては以下が挙げられます。

『砂塵に血を吐け』 (Blood at Sundown, 1966)
『地獄から来たプロガンマン』 (Seven Dollars on the Red, 1966)
『嵐を呼ぶプロ・ファイター』 (Why Go On Killing?, 1965)
『ジェントルマン・キラー』 (Gentleman Killer, 1967)
『キラー・キッド』 (Killer Kid, 1967)
『No Room to Die』 (1969)
* 『追跡者ガリンゴ』 (Garringo, 1969)

特に1969年に製作された『Django The Bastard』では、主演だけでなく製作と共同脚本も手掛けており、この作品がクリント・イーストウッド監督の『荒野のストレンジャー』にインスピレーションを与えたという説もあります。また、ジャンニ・ガルコ、ピーター・リー・ローレンス、ウィリアム・バーガーといった、このジャンルを代表する俳優たちとも数多く共演しています。

その後の活動と晩年

マカロニ・ウェスタンというジャンルが1970年代半ばから衰退に向かうにつれて、ステファンの俳優としての活動も以前ほど活発ではなくなりました。しかし、彼はウェスタン以外のジャンルにも挑戦しており、例えば1971年のジャッロ映画『The Night Evelyn Came Out of the Grave』などに出演しています。キャリアを通じて、ソフィア・ローレン、ジーナ・ロロブリジーダ、クラウディア・カルディナーレ、エルケ・ソマー、ジュリアーノ・ジェンマ、フランコ・ネロ、ジャン・マリア・ヴォロンテといった、イタリア国内外の著名なスターたちとも共演の機会がありました。

俳優として得た資産を基盤に、ステファンは引退後の人生を穏やかに送ったとされています。2004年6月4日、彼は癌のため、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロでその生涯を閉じました。アンソニー・ステファンは、マカロニ・ウェスタンの歴史において最も多くの作品に主演した俳優として、今なお多くのイタリア映画ファン、特にこのジャンルの愛好家の間で特別な存在感を放ち続けています。

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