アンソニー・ノリス・グローブス

アンソニー・ノリス・グローブスの生涯と功績

アンソニー・ノリス・グローブス（1795年2月1日 - 1853年5月20日）は、イギリスのプロテスタント伝道者であり、特に「フェイス・ミッションの父」として語り継がれています。彼はアラビア語圏に対する初めてのプロテスタント伝道を実現した人物として、その業績が重要視されています。

早年期と教育

グローブスはハンプシャーのニュートン・バレンスに生まれ、実業家である父の影響を受けながら育ちました。彼の家族は英国国教会に従っていたため、幼少期からの教えは彼の後の信仰に影響を及ぼしました。ロンドンで歯科医の修業を経て、19歳の時にはプリマスで開業し、2年後にはいとこのメアリーと結婚、その後エクセターに移住しました。

1826年、グローブスはダブリンのトリニティ・カレッジに入学し、英国国教会の宣教師になりたいという夢を持ちました。しかし、彼は新約聖書を学ぶ中で、初期教会の姿勢が普遍的な模範になるとの信念に至ります。これによって、彼は聖職を持たないまでも、聖書を学び、祈り、共同体を形成することで伝道が可能であると確信しました。

バグダッドでの伝道

グローブスは1829年から1832年にかけて、家族や友人と共にバグダッドでの伝道活動を始めます。しかし、彼の滞在中に内戦や疫病、洪水の問題が続き、非常に困難な状況に直面しました。さらに、妻と娘を失うという悲劇に見舞われながらも、彼は伝道の使命を続けました。

その後、彼はインドへ移り、そこでも独自の信仰に基づいた伝道活動を行いました。グローブスは、インドはキリスト教の影響が薄い場所であるため、教派に縛られない思想を広める必要があると感じていました。また、インディア人を下に見るようなヨーロッパの姿勢にも反対し、真摯な態度で現地の人々に寄り添う伝道を心掛けました。

1835年にイギリスに帰国した際に再婚し、その後すぐに再びインドに戻り、活動を続けました。最終的に彼は健康を害し、1852年に再度イギリスに戻りますが、1853年にジョージ・ミュラーの家で生涯を終えました。

思想と影響

グローブスは、「自分の人生は失敗作だ」と周囲に語っていましたが、彼の思想はプリマス・ブレザレン運動に大きな影響を与えました。特に、「聖書の教えに従って生きるべきだ」という彼の倫理観は、多くの信徒に共感を呼び、後の年代に大きな影響を及ぼしました。

彼の著作『キリスト者の献身』は、ジョージ・ミュラーをはじめとする多くの人々に深い思想的インスピレーションを与えたとされています。グローブスの理想は、聖職制度を否定し、教会の一体性を重視するものであり、彼の死後もその影響は続きました。

しかし、彼の理想とは裏腹に、プリマス・ブレザレン運動は内部での分裂を経験し、初期の団結が損なわれていくことになります。1836年には、運動のリーダーであったジョン・ダービに対して、独善的な教派主義に陥らないよう注意を促しましたが、その願いは実現しませんでした。ただし、グローブスの思想を継承する者として、ジョージ・ミュラーやロバート・チャップマンの名が挙げられ、彼の理想は今もなお信仰の中で息づいています。

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