アンドロジナスドッキング機構

アンドロジナスドッキング機構 (APAS)とは

アンドロジナスドッキング機構（Androgynous Peripheral Attach System, APAS）は、宇宙空間で宇宙船同士をドッキングさせるための機構です。ミール宇宙ステーションや国際宇宙ステーション（ISS）で使用され、スペースシャトルとISSの接続、ザーリャモジュールとISSのアメリカ側モジュールの接続などに利用されました。また、中国の神舟宇宙船にも互換性のあるシステムが採用されており、将来的なISSとのドッキングも視野に入れています。

設計

APASは、S.P.コロリョフ ロケット&スペース コーポレーション エネルギアのウラジーミル・シロミャトニコフによって設計されました。アポロ・ソユーズテスト計画（ASTP）に端を発し、初期の探針誘導式ドッキング機構とは異なり、どのAPASドッキングリングも他のAPASドッキングリングと接続できるという特徴を持っています。

アンドロジナスの意味

「アンドロギナス」とは、オス・メスの区別がない、両性具有という意味です。APASは、どちらの側もドッキングが可能でありながら、ドッキング時には能動側と受動側に役割を分担し、状況に応じて両方の役割をこなせるように設計されています。

APASのバージョン

APASには、以下の3つの基本バージョンが存在します。

APAS-75

アポロ・ソユーズ共同飛行計画（ASTP）のために開発されました。従来のドッキング機構とは異なり、両方のユニットが必要に応じて能動側と受動側の役割を担うことができました。ドッキング時には、伸長した能動側ユニットのスペード形の案内板と、折りたたまれた受動側ユニットが、おおよその位置を調整し合います。案内板を保持したリングが位置を微調整し、能動側ユニットのラッチが受動側ユニットの受け溝に嵌まり込みます。衝撃エネルギーは、アメリカ側ユニットのショックアブソーバーとソビエト側の機械式減衰機によって吸収されます。能動側は、ドッキングカラーを同じ位置に持ってくるために畳み込まれます。APAS-75は、ソユーズ19号で使用されました。

APAS-89

ミール計画とブラン往還機のために開発されました。オリジナルの設計から大幅な変更が加えられ、外側リングの直径が縮小され、位置調整用の花弁状の板が内側に窄まるように設計変更されました。ブラン計画は中止されましたが、ミールのクリスタルモジュールには2基のAPAS接続カラーが用意されました。ミール・ドッキングモジュール（MDM）は、クリスタルとシャトルを接続するためのスペーサーモジュールとして使用されました。

APAS-95

シャトル・ミール計画のために採用されました。APAS-89と基本的には同じもので、シャトルのオービタ・ドッキング機構に搭載されました。能動側の捕捉リングが、ISSの与圧結合アダプタ（PMA）上の受動側接合リングと結合します。キャプチャーリングが位置を調整し、12個のストラクチャルフックが展開され、気密シールが施されます。PMA側のAPASは、受動側専用に改造されました。

まとめ

アンドロジナスドッキング機構（APAS）は、宇宙ステーションの建設や宇宙船の運用において重要な役割を果たしました。その柔軟な設計と高い信頼性により、今後の宇宙開発においても重要な技術であり続けるでしょう。

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