アンバール

アンバール：古代都市の盛衰

アンバールは、イラク中央部のユーフラテス川東岸に位置し、古代から14世紀頃まで存在した都市です。現在のファッルージャの近くに位置していました。

位置と起源

アンバールは、ユーフラテス川の東岸に位置し、すぐ北にはティグリス川とユーフラテス川を結ぶナフル・イーサー運河があります。この地には、紀元前3000年前の遺丘が確認されており、古代バビロニア時代、あるいはそれ以前から都市が存在していた可能性があります。

サーサーン朝時代のペーローズ・シャープール

元々「ミシケ」と呼ばれていたこの地は、後にサーサーン朝ペルシアのシャープール2世によって「ペーローズ・シャープール」と改名されました。350年頃に建設され、アソリスタン州に区画されました。363年にはローマ皇帝ユリアヌスによって破壊・略奪されましたが、すぐに再建されました。

キリスト教の中心地として

5世紀以降、ペーローズ・シャープールはアッシリア東方教会の中心地となり、司教座聖堂が置かれました。486年から1074年までの間に14人の司教が就任し、そのうち3人が総主教に昇進しました。

イスラームの征服と「アンバール」への改名

633年/4年、イスラームの武将ハーリド・イブン・アル＝ワリードによって征服され、アラブ勢力の支配下に入ると、「穀倉」を意味する「アンバール」と呼ばれるようになりました。この名前は、ペルシア人の穀物庫が置かれていたことに由来し、蓄えられた食糧はラフム朝によって利用されていました。

アッバース朝の時代

アンバールは、キリスト教徒やユダヤ人の避難先となり、657年には預言者ムハンマドの従兄弟アリーによって90,000人のユダヤ教徒が捕虜にされたと伝えられています。アラブの征服後、アンバールの地主は運河の開削を願い出て、サアド運河、マフドード運河、シャイラー運河が開通しました。

アッバース朝期にもアンバールは重要な都市であり続け、752年にはアッバース朝の創始者サッファーフがホラーサーン出身の兵士の駐屯地となる都市を建設し、自らも居住しました。バグダードが完成する762年まで、アンバールは首都としての地位を保ちました。

衰退と遺棄

9世紀には周辺のベドウィンの襲撃を受けましたが、繁栄を続けました。しかし、927年にはカルマト派のアブー・ターヒル・ジャンナービーによって包囲され、その後もベドウィンの攻撃を受けました。これにより、アンバールは徐々に衰退していきました。10世紀後半には人口の減少が記録され、20世紀初めには完全に放棄された遺跡となりました。

アンバールは、古代から中世にかけて、その地理的な重要性から様々な勢力の支配を受け、繁栄と衰退を繰り返した都市でした。

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