アンホ爆薬

アンホ爆薬（ANFO）とは

アンホ爆薬（ANFO）は、硝酸アンモニウム（硝安）と燃料油を混合した爆薬の一種で、硝安油剤爆薬とも呼ばれます。火薬学会の規格では、硝酸アンモニウムと引火点50℃以上の燃料油のみで構成され、他の火薬や金属粉を含まないものと定義されています。また、工業雷管や電気雷管では起爆しないことも特徴です。

組成

アンホ爆薬の主成分である硝安は、軽油を吸収しやすい多孔質のプリル状のものが用いられます。これは、硝安製造工場で溶融した硝安をスプレー状にして冷却し、粒状に加工したものです。硝安は吸湿しやすく固化する性質があるため、有機防結剤が添加されますが、その量は法規により0.2%以下に制限されています。有機物が多すぎると爆発性が増し危険なためです。

また、アンホ爆薬は雷管では起爆しないことが法規上の必須条件ですが、一部の有機防結剤は製品の雷管感度を高めてしまうことがあります。

起爆方法

アンホ爆薬は、単独では雷管で起爆しません。そのため、起爆にはダイナマイトなどの他の爆薬を雷管として使用し、その爆発力を伝播させる必要があります。

特徴

アンホ爆薬は、発生するガスの量に比べて発生熱量が少ないため、ダイナマイトよりも安全性が高いとされています。また、安価であることも大きな利点です。これらの特徴から、砕石などの坑外発破において急速に普及しました。

歴史

アンホ爆薬は、1950年代後半に発明されましたが、発明者は特定されておらず、製法の特許も存在しません。当時、北米ではロバート・アッカーやメルヴィン・クックらが硝安と様々な物質を組み合わせた安価な爆薬の特許を多数取得していました。特にクックは、硝安と水、鋭感剤からなるスラリー爆薬をカナダの鉱山で実用化していました。こうした背景から、誰かがディーゼル燃料として入手しやすい軽油と硝安を混合することを思いついたのではないかと推測されています。

特許が存在しなかったことから、アンホ爆薬は北米から世界中に急速に広まりました。日本では1964年から製造が開始されました。

当初は、ダイナマイト製造業者がアンホ爆薬を製造し、ダイナマイトと同様に包装していましたが、アンホ爆薬の利点を最大限に活かすために、発破業界で製造し、袋詰めなどのバルク状態で発破現場に運搬し、発破孔に注入するようになりました。さらに、火薬類取締法の改正により移動式製造機が使用可能になり、肥料用硝安と軽油を現場で混合してアンホ爆薬を製造できるようになり、アンホ爆薬のメリットを最大限に享受できるようになったのです。

1973年にはアンホ爆薬の製造量がダイナマイトと肩を並べ、現在ではダイナマイトの3倍以上の量が使用されています。しかし、その一方で、安価で入手が容易であることから、密漁やテロなどの犯罪にも利用されるという問題も抱えています。

悪用事例

アンホ爆薬は、その安価さと入手しやすさから、テロリストが使用する安価な兵器の一つとして知られています。特に、車爆弾や即席爆発装置の主要な爆薬として利用されることが多いです（例：ノルウェー連続テロ事件）。また、密漁にも利用されており、その取締りは困難な状況です。

まとめ

アンホ爆薬は、産業用途においては非常に有用な爆薬ですが、その特性から犯罪に悪用される危険性も持ち合わせています。そのため、適切な管理と規制が不可欠です。

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