アンリ・トマジ

アンリ・トマジ：地中海の光彩を音に託した作曲家

アンリ・トマジ（Henri Tomasi, 1901年8月17日 - 1971年1月13日）は、フランスの作曲家、そして指揮者として、20世紀の音楽界に独自の足跡を残しました。コルシカ島出身の両親のもと、マルセイユで生まれたトマジは、パリ国立高等音楽院でヴァンサン・ダンディやジョルジュ・コサードに師事し、音楽家としての基礎を築きました。

若き才能の開花

1927年、トマジはカンタータ「コリオラン」でローマ賞作曲部門2位、そして指揮部門では1位を獲得し、その才能を広く知らしめました。この受賞は、彼の作曲家、指揮者としての両面における卓越した能力を示すものでした。その後、1946年から1947年にかけては、モンテカルロ管弦楽団の音楽監督を務めるなど、指揮者としても活躍しました。

多彩な作品群

トマジの作品は、交響曲、劇場音楽、歌曲など100曲を超え、その作風は多岐に渡ります。特に、管楽器を効果的に用いた作品は、彼の音楽的特徴を際立たせており、重要なレパートリーとして多くの演奏家によって取り上げられています。

主要な作品

典礼ファンファーレ (Fanfares liturgiques, 1947): トマジ自身の歌劇「ドン・ファン・ド・マニャラ」の音楽を基にした金管楽器と打楽器のための合奏曲で、金管合奏の重要なレパートリーとして頻繁に演奏されます。
木管五重奏曲 (Quintette à vent, 1952): スケルツォ楽章には、「典礼ファンファーレ」と同じ音楽進行が用いられています。
コルシカの主題による変奏曲 (Variations sur un thème corse, 1938): 木管五重奏のために書かれた作品で、コルシカの旋律が用いられています。
春 (Printemps, 1963): 木管五重奏にアルトサクソフォンを加えた六重奏編成の作品です。
トランペット協奏曲 (Concerto pour trompette et orchestre, 1949): トランペット協奏曲の重要なレパートリーの一つであり、コンクールやCD録音も多数存在します。
ホルン協奏曲 (Concerto pour cor et orchestre, 1955): 当時パリ音楽院管弦楽団の首席ホルン奏者であったルシアン・テーヴェのために作曲された難曲ですが、演奏頻度は少なく、CD録音も少ないのが現状です。日本人ホルン奏者の根本雄伯が得意としています。
クラリネット協奏曲 (Concerto pour clarinette et cordes, 1957?): クラリネットと弦楽のための協奏曲で、ジョシュア・ドス・サントスによる演奏が知られています。
第三世界のための交響曲 (Symphonie du tiers monde, 1968): ベルリオーズへのオマージュとして作曲され、「幻想交響曲」の主題が暗示的に用いられています。オンドマルトノや多数の打楽器を含む、大編成の管弦楽のための作品です。
12のコルシカの歌 (12 Chants populaires de l'île de Corse, 1971): 無伴奏女声合唱のための作品です。

地中海の魂

トマジの音楽の根底には、地中海の豊かな自然と文化が流れています。彼は「地中海の光、色は私にとって大きな喜びである。心の部分からでない音楽は音楽でない。私はメロディストだ」と語っており、その言葉通り、彼の作品からは、メロディアスで色彩豊かな、情熱的な音楽が感じられます。彼の音楽は、地中海の魂を映し出す鏡と言えるでしょう。

関連資料

書籍:
Sax, Mule & Co, ジャン＝ピエール・ティオレ, H & D, Paris, 2004 (アンリ・トマジ, 183). ISBN 2 914 266 03 0
外部リンク:
アンリ・トマジ協会
アンリ・トマジの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

アンリ・トマジの音楽は、時代を超えて、聴く人の心を魅了し続けています。彼の作品に触れることで、地中海の光と色彩、そして情熱を感じていただければ幸いです。

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