アンワリー

アンワリー（Anvari）

アンワリー（ペルシャ語: انوری）は、1126年頃に生まれ、1189年頃に没した、現在のイランにあたるホラーサーン地方のアビーワルド出身の著名なペルシャ詩人です。本名はアウハド・アッディーン・アリー・イブン・マフムードといい、セルジューク朝の宮廷で才能を発揮しました。

生涯とキャリア

アンワリーは故郷ホラーサーンのアビーワルドで生を受けたと推定されています。若い頃はトゥースにあるマンスーリーヤ学院で学び、詩作の基礎を築いたようです。当初は「ハーワリー」という筆名を用いていましたが、後にアンワリーと称するようになりました。

彼のキャリアにおける重要な転機は、セルジューク朝の第8代スルターンであるアフマド・サンジャルの知遇を得て、宮廷詩人として仕えるようになったことです。宮廷詩人として、アンワリーは多くの頌詩（カスィーダ）を詠み、スルターンへの賛辞や時事問題に対する感情を表現しました。これらの詩は『アンワリー詩集』としてまとめられており、約1万5000句にも及ぶ膨大な量です。特にインドでは『クルリーヤート』として広く知られ、800頁近い大冊として刊行されました。

詩の特徴と評価

アンワリーの詩は、その難解な文体で知られています。しかし、彼は単なる詩人にとどまらず、天文学、占星術、数学、哲学といった幅広い分野に深い知識を持っていました。これらの知識が彼の詩に奥行きを与え、複雑ながらも知的な作品を生み出しました。

彼は主にカスィーダ詩の分野で優れた才能を示し、その功績から、同じくペルシャ文学の巨匠であるフェルドウスィーやサアディーと並び称される存在となりました。カスィーダ詩においては、最高峰に位置する詩人の一人と評価されています。また、カスィーダだけでなく、叙情詩（ガザル）、四行詩（ルバーイー）、風刺詩なども手掛けており、多才な一面も見せています。

代表作『ホラーサーンの涙』

アンワリーの作品の中で、最も広く知られているのが『ホラーサーンの涙』です。この詩は、1153年にグズ・トルコ族がホラーサーン地方に侵攻した際の悲惨な出来事を背景に詠まれました。故郷が受けた甚大な被害に対する深い悲しみと愛国心が込められたこの作品は、ペルシャ文学史においても特に感動的な詩の一つとして語り継がれています。

晩年

1157年に彼の庇護者であったスルターン・アフマド・サンジャルが亡くなると、アンワリーは後ろ盾を失い、失意のうちにバルフへと移り住みました。バルフでは風刺詩も詠みましたが、その内容がしばしば問題を引き起こしたと言われています。晩年は詩作から遠ざかり、沈黙を守るようになったと伝えられています。アンワリーは1189年頃、このバルフの地でその生涯を閉じました。

アンワリーは、その卓越した知識とカスィーダ詩における偉大な功績によって、ペルシャ文学史に不動の地位を確立しています。

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