トゥース

トゥース：古代ホラーサーンの中心都市

トゥース（Ṭūs）は、古代から14世紀頃まで現在のイラン北東部、ホラーサーン地方に存在した歴史的な都市です。現在のラザヴィー・ホラーサーン州、イラン第二の都市マシュハド近郊に位置しています。この地域は、中央アジアと西アジアを結ぶ重要な地点であり、古代から様々な民族や文化が交錯する場所でした。

歴史

トゥースは、ホラーサーン地方の中心都市として古代から繁栄しました。紀元前4世紀にはアレクサンドロス大王が東征の際に通過し、その後もトルコ系遊牧民が西方へ移動する際にこの地を通りました。ギリシア人はトゥースを「スーシア（Sousia）」と呼んでいました。

619年には、西突厥がサーサーン朝の王子が守るトゥースを攻撃し、第二次ペルソ・テュルク戦争の舞台となりました。この戦いでは、サーサーン朝が勝利しましたが、その背景にはビザンチン帝国の支援がありました。5世紀末にはキリスト教徒の居住区が確認されており、多様な文化が存在したことがわかります。

651年には、アラブ＝ムスリムの大征服によってホラーサーン軍がトゥースを占領しました。占領後、ホラーサーン軍はシリアやイラクから独立し、アッバース朝革命を支援する軍事力を提供するようになりました。9世紀初頭には、アッバース朝カリフのハールーン・ラシードがトゥース近郊で病死し、その場所に墓所「ハールーニーエ」が建てられました。さらに818年には、シーア派イマームのアリー・レザーがトゥースへの旅の途中で亡くなり、ハールーニーエに埋葬されました。

その後、トゥースは様々な王朝の支配下に入りました。820年にはターヒル朝、896年にはサーマーン朝が支配し、994年にはガズナ朝のマフムードが、1037年にはセルジューク朝のトゥグリル・ベグが支配下に置きました。1072年には、ニザームルムルクが街の統治を任されました。10世紀頃には、トゥースでトルコ石、銅、アンチモンが産出されていたことも記録されています。

1121年に街は要塞化されましたが、1153年にはオグズ族の襲撃を受けてモスクが破壊されました。1200年または1201年にはゴール朝のギヤースッディーン・ムハンマドに降伏し、1220年にはチンギス・ハーンの征西の際に占領されました。その後、14世紀までフレグ・ウルスの支配下にありました。1360年頃にはサルバダール政権が支配し、この頃に旅行家イブン・バットゥータがトゥースを訪れています。13世紀から14世紀の地誌によると、当時トゥースは大小二つの街からなり、大きい方の街は「タバラーン」と呼ばれていたそうです。

1385年にティムール朝のミーラーン・シャーに征服されたことがきっかけとなり、トゥースは徐々に衰退していきました。15世紀中葉には文献にその名前が言及されなくなり、トゥースは衰退していきました。その一方で、アリー・レザーの墓廟があったスィナーバード村がシーア派信徒を集めて成長し、現代のマシュハドとなりました。

トゥース出身の著名人

トゥースは多くの著名人を輩出しました。最も有名なのは、ペルシアの叙事詩『シャー・ナーメ』の作者である詩人フェルドウスィーです。1934年には彼の生誕1000年を記念して、トゥースに廟が建設されました。

その他にも、錬金術師ジャービル・イブン＝ハイヤーン、詩人アサディー・トゥースィー、政治家ニザームルムルク、イスラム神学者ガザーリー、天文学者ナスィールッディーン・トゥースィー、シーア派の学者アブー・ジャーファル・トゥーシーなどがトゥース出身の著名人として知られています。

トゥースは、その歴史と文化的な貢献により、今もなお重要な歴史的場所として認識されています。

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