アーサー・トルドー

アーサー・ギルバート・トルドー

アーサー・ギルバート・トルドー（Arthur Gilbert Trudeau, 1902年7月5日 - 1991年6月5日）は、アメリカ合衆国の軍人であり、最終階級は中将です。朝鮮戦争におけるポークチョップヒルの戦いを指揮したことで特に知られています。

生い立ちと初期の軍歴

トルドーは1902年、バーモント州ミドルベリーで生まれました。幼少期からホレイショ・アルジャーの小説に影響を受け、軍人を志すようになり、1920年に陸軍士官学校に入学しました。卒業後は工兵学校で教育を受け、1928年にはフォート・ルイスの第6工兵大隊に配属され、中隊長としてキャリアをスタートしました。第一次世界大戦における工兵の活躍に感銘を受け、自らも工兵の道を選んだとされています。

その後、トルドーはニューヨークでのニューディール政策の進捗管理、シアトル工兵管区勤務、ハワイ駐在などを経て、1931年にはニュージャージー州兵第104工兵大隊に配属されました。1941年には陸軍指揮幕僚大学に教官として着任し、機械化歩兵師団の戦闘ドクトリンの策定に携わりました。1942年初頭には、ウォルター・ウィルソン少佐と協力し、英仏海峡をモデルとした水陸両用作戦の課題を作成しました。

第二次世界大戦での活躍

1942年、トルドーは水陸両用作戦を専門とする第4工兵特別旅団に配属されました。同年秋にはオーストラリアで数千隻もの水陸両用艇の製造を指揮し、ヨーロッパ侵攻を指揮していたドワイト・D・アイゼンハワー将軍に対し、水陸両用作戦の専門家として助言を行いました。1944年には准将に昇進しています。1945年には、フィリピンのマニラに設置された秘密基地キャンプXの司令官として、日本本土侵攻作戦（ダウンフォール作戦）の準備に携わりましたが、この作戦は実行されることなく終戦を迎えました。

第二次世界大戦後

戦後、トルドーはマニラ軍事裁判に陪審員として出席し、日本軍の指揮官であった本間雅晴中将らを裁きました。1946年にアメリカに帰国し、陸軍人員管理総監を務めました。1948年からは在独米軍の保安隊に勤務し、1950年には陸軍大学校の副校長に就任しました。この時期に兵科を機甲科へと変更しています。

1952年からは日本進駐軍の第1騎兵師団に勤務し、1953年には朝鮮戦争中の朝鮮半島に展開する第7歩兵師団の師団長に就任しました。トルドー自身が偵察部隊を率いてポークチョップヒルの偵察を行い、その功績が認められ銀星章を受章しました。

1953年10月には陸軍情報総監に任命されましたが、1955年9月にはCIA長官アレン・ダレスがペンタゴンに送った覚書が原因で解任されました。この覚書の内容は公表されていませんが、トルドーは過激な反共主義者として知られており、政府見解との対立から他の政府関係者と衝突することが多かったとされています。トルドー自身は、自身の声明が国務省の検閲を受け、「共存は選択肢ではない。致命的な退廃だ」「我らが祖国は、全世界の共産主義による世界的総攻撃の主標的だ」といったフレーズが削除されていたと語っています。

情報総監としてのトルドーの重要な任務の一つは、朝鮮戦争の元捕虜に対する洗脳工作の実態調査でした。この調査で作成された1万ページを超える報告書は、アイゼンハワー大統領に提出され、いわゆる「6つの行動規範」の制定に繋がりました。

解任後、トルドーは極東軍作戦幕僚長補として東京に派遣され、1956年には中将に昇進し、再び朝鮮半島に派遣され第1軍団司令官に就任しました。1958年には陸軍研究開発局局長に就任し、退役までこの職を務めました。研究開発局局長時代には、ミサイルや兵器開発に特に注力しました。

人道的な側面と人物像

トルドーは、米軍における人種差別撤廃の支持者であり、軍での勤務を通じて教育機会のなかった人々に新たなキャリアの機会を提供し、それがアメリカ全体の利益につながると主張しました。性格は無口ながらも堅苦しくはなく、左利きでバンジョーを演奏し、家族や兵士たちを楽しませていたといいます。また、エチオピア人部隊が指揮下に加わった際には、部族の踊りを披露して兵士たちを喜ばせました。元同僚によると、彼は頭の回転が早く精力的な人物で、ピストル射撃は左右どちらの手でも熟練していたそうです。

学歴と功績

トルドーは、カリフォルニア大学バークレー校で土木工学の修士号を取得し、複数の大学から名誉博士号を贈られています。退役までに多数の勲章を受章したほか、情報将校として軍情報部殿堂に名を連ねています。

ポークチョップヒルの戦いを題材にした1959年の映画『勝利なき戦い』では、ケン・リンチがトルドーを演じました。

退役後

1962年に陸軍を退役した後、トルドーはガルフ石油の機関であるガルフ・ラボの所長、ロックウェル・インターナショナル航空宇宙事業部の議長付特別顧問を務めました。1991年6月5日に心不全で死去し、妻のほか、娘1人、継娘3人、継息子1人、孫11人、曾孫12人が残されました。

トルドーの生涯は、軍人としての卓越したキャリアだけでなく、人道的な側面や多才な人物像を物語っています。

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