アーサー・ハーバート (初代トリントン伯爵)

アーサー・ハーバート（1647年 - 1716年）

アーサー・ハーバートはイギリスの海軍軍人、政治家であり、初代トリントン伯爵として知られています。彼は海軍戦略における「現存艦隊主義」を創始したとされ、その影響は今日に至るまで続いています。ハーバートはサー・エドワード・ハーバートの息子であり、裁判官としても知られる兄のエドワード・ハーバートを持ちます。

初期の経歴と政治活動

ハーバートはチャールズ2世に仕え、第2次英蘭戦争での海軍の活動がその出発点でした。彼はイギリス海軍の後衛戦隊司令官に任命され、将官として水兵たちに非常に人気がありました。イングランド議会の議員としても活動し、宗教に対しては無関心で、多額の給与を得ていたため、忠実な王党派と見なされていました。

しかし、1687年にジェームズ2世が提出した審査法の廃止を求めた法案に対し、ハーバートは賛成を拒否しました。この結果、彼は国会議員や海軍少将としての地位を完全に失い、政治の世界から姿を消すことになります。

名誉革命と海軍中将としての指導

ハーバートはその後オランダに移り、イギリスへの遠征計画に参加します。1688年には名誉革命においてウィリアム3世の進入を支援し、来る艦隊を指揮してオランダ艦隊をデヴォンのトーベイまで導きました。この功績により、彼は海軍卿に任命されることとなります。

大同盟戦争が勃発した後、ハーバートはイギリスの主力艦隊の司令官としてフランス艦隊と戦いました。彼は特にウィリアマイト戦争におけるアイルランドへの出撃で知られ、優勢なフランス艦隊に挑んだものの、バントリー湾の海戦では敗北を喫しました。しかし、彼はその戦闘で見せた勇気が評価され初代トリントン伯爵に叙されました。

ビーチー・ヘッドの戦闘とその後

1690年6月、彼はフランス艦隊と対峙し、ビーチー・ヘッドの海戦を戦います。この戦闘では、ハーバートは消極的な戦略を取ったため、多くの艦隊を失い、イギリス艦隊は大敗を喫します。帰還後、彼は逮捕されロンドン塔に収監されましたが、軍法会議では全員一致で無罪となる判決を受けました。

彼の弁明において使われた「フリート・イン・ビーイング」という言葉は、その後「現存艦隊主義」の一環として軍事学において確立されました。1700年代に入り、ハーバートは政界から遠ざけられ、1716年に亡くなりました。

まとめ

アーサー・ハーバートは、彼の軍史における業績ゆえに大きな影響を与えた人物です。彼の指揮には批判も寄せられていますが、彼が提唱した戦略理念は現代の海軍戦略にも影響を及ぼしています。トリントン伯爵の名は、彼の海軍の貢献と共に歴史の中に刻まれています。

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