アージュン (戦車)

インドの第三世代主力戦車「アージュン」

アージュン（Arjun）は、インドが開発した第三世代主力戦車です。名前は、古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』に登場する英雄アルジュナに由来します。本車は、インドが長年培ってきた技術を結集し、国産化を目指して開発されました。

開発の経緯

1974年、インドは戦車技術の開発能力と製造の国産化を目指し、戦車開発に着手しました。当初の要求は、第二世代戦車に相当するものでしたが、レオパルト2などの第三世代戦車の登場や、パキスタンのM1エイブラムス導入計画を受け、インド軍は計画を白紙に戻し、要求を大幅に引き上げました。新しい要求は、戦闘重量55トン、120mm級主砲、複合装甲、1,500馬力級ガスタービンエンジンという非常に高度なものでした。

しかし、これらの要素を独力で開発しようとしたため、開発は難航しました。そこで、インドはレオパルト2を開発した西ドイツのクラウス＝マッファイ社をコンサルタントとして招き、設計支援を受けました。1984年には試作車両が完成しましたが、複合装甲は未完成で、駆動部も仮製のものという状態でした。その後も、駆動部の試験に多くの時間を費やし、1993年にようやく射撃試験に成功しました。そして、1996年1月9日、アージュンは正式に発表され、1998年に初期量産車が完成しました。

特徴

アージュンは、以下の様な特徴を持っています。

国産の55口径120mmライフル砲: 新開発のAPFSDS弾やHEAT弾、HESH弾を発射可能。
複合装甲: インド国防冶金研究所（DMRL）で開発されたカンチャン・アーマーを装備。
ハイドロニューマチック・サスペンション: 優れた路外機動性を実現。
C4ISR機能: 戦場での情報共有と指揮統制を支援。
NBC防護装置: 核・生物・化学兵器からの防御。

エンジンは当初、国産の空冷ディーゼルエンジンが試作されましたが、出力不足のため、最終的にドイツMTU社製の液冷ターボチャージド・ディーゼルエンジンが採用されました。変速機もドイツ製で、72km/hの最高速度を発揮します。

派生型

アージュンには、いくつかの派生型があります。

アージュン Mk.I: 最初の量産型。
アージュン Mk.IA: 砲塔形状の変更、RWSの採用など改良が施された最新型。
アージュン Mk.II: 爆発反応装甲の装着、C4ISRシステムの搭載、LAHAT対戦車ミサイルの運用能力の付与など、大幅な改良が施された型。
EXタンク: T-72の車体にアージュンの砲塔を搭載した戦車。
ビーム自走砲: アージュンの車体に南アフリカのG5 155mm榴弾砲を搭載した自走砲（開発中止）。
アージュン・カタパルト自走砲: アージュンの車体にM-46 130mmカノン砲を搭載した自走砲。
アージュン架橋戦車: アージュンMk.1Aの車体に戦車橋を搭載した架橋戦車。
* アージュンARRV: アージュンの車体を元にした装甲回収車。

運用

アージュンは、主にパキスタン国境に近いラージャスターン州の砂漠地帯で運用されています。アージュンMk.Iは、第43機甲連隊と第75機甲連隊に配備されています。また、アージュンの輸送には、専用のトランスポーターが開発されています。陸路輸送のほか、C-17グローブマスターIIIによる空輸も可能です。

まとめ

アージュンは、インドが長年の努力の末に開発した国産主力戦車です。開発には多くの困難がありましたが、最新技術を導入し、独自の改良を重ねることで、インドの防衛に貢献する戦車として活躍しています。

もう一度検索