イェロータバンの戦い

イェロータバンの戦い：J・E・B・スチュアート散華の地

イェロータバンの戦いは、南北戦争の激戦地の一つであり、オーバーランド方面作戦の重要な局面で発生しました。1864年5月11日、北軍騎兵と南軍騎兵が激突し、南軍の伝説的な騎兵指揮官J・E・B・スチュアート少将が致命的な傷を負ったことで知られています。

戦いの背景

オーバーランド方面作戦は、北軍のユリシーズ・グラント中将が、南軍のロバート・E・リー将軍率いる北バージニア軍に対して仕掛けた攻勢でした。荒野の戦いやスポットシルバニア・コートハウスの戦いで決着がつかない中、北軍騎兵隊の指揮官フィリップ・シェリダン少将は、自身の部隊の役割に不満を抱いていました。当時、騎兵隊はジョージ・ミード少将の指揮下に入り、偵察や遮蔽といった伝統的な役割を担っていましたが、シェリダンは騎兵を独立した攻撃部隊として活用し、敵の後方地域を襲撃することに価値を見出していました。

シェリダンはグラントに対し、騎兵隊が独立して行動すれば、長年の宿敵であるスチュアートを打ち破ることができると進言。グラントはシェリダンの提案に興味を持ち、ミードを説得して独立した騎兵作戦の実施を認めさせました。その結果、5月9日、1万の騎兵と32門の大砲からなる強力な北軍騎兵隊が、リー軍の背後を突くべく南東へ進軍を開始しました。彼らの目的は3つありました。第一に、鉄道線路や物資を破壊することでリー軍の補給線を妨害すること。第二に、南軍の首都リッチモンドを脅かすことでリー軍の注意をそらすこと。そして最も重要な第三の目的は、スチュアートを撃破することでした。

北軍騎兵隊は、約21kmにも及ぶ広範囲に展開し、ビーバーダム駅の南軍補給基地を襲撃。南軍は重要な軍事物資の多くを事前に破壊しましたが、北軍はバージニア中央鉄道の列車や機関車を破壊し、電信線を切断、さらに荒野の戦いで捕虜となっていた約400名の北軍兵士を救出しました。

戦闘の経過

スチュアートは、約4500の騎兵を率いて、シェリダン軍とリッチモンドの間に入るように配置しました。5月11日の正午、両軍はリッチモンドの北10kmに位置する放棄された宿屋、イェロータバンで激突しました。北軍は3個師団を擁し、火力でも優位に立っていました。対する南軍は、リッチモンドに至る道路に隣接した尾根で頑強に抵抗し、3時間以上にわたって戦闘が続きました。

スチュアート自身も馬に乗り、兵士たちを激励して北軍騎兵を押し戻そうとしましたが、その最中、第5ミシガン騎兵隊が後退する際に、元狙撃兵であったジョン・A・ホフがスチュアートを至近距離から拳銃で撃ちました。スチュアートは致命傷を負い、翌日リッチモンドで息を引き取りました。

スチュアートの負傷後も戦闘は1時間ほど続き、フィッツヒュー・リーが指揮を引き継ぎました。シェリダンはその後、部隊を離脱させ、リッチモンド方面へ南下。市の北のわずかな守備隊を突破し、チカホミニー川を渡り、ジェームズ川のベンジャミン・バトラーの部隊と合流しました。

戦いの結果と影響

イェロータバンの戦いは、シェリダン率いる北軍の騎兵隊にとって、戦略的な大成功となりました。北軍は625名の損失を被りましたが、南軍兵300名を捕虜とし、400名の北軍兵捕虜を救出しました。しかし、この戦いの最大の成果は、南軍の優秀な騎兵指揮官であったJ・E・B・スチュアートを失わせたことでした。スチュアートの死は、リー軍にとって大きな痛手となり、その後の戦局に大きな影響を与えました。

イェロータバンの戦いは、南北戦争における騎兵戦の重要性を改めて示すとともに、スチュアートというカリスマ的指揮官の死という、歴史的な転換点となった戦いと言えるでしょう。

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