イカルイト

イカルイト：ヌナブト準州の州都

イカルイト（Iqaluit）は、カナダ北部のヌナブト準州に位置する都市であり、同準州の州都です。バフィン島の南部に位置し、フロビッシャー湾の奥に開けています。人口は約6,700人（2011年時点）で、その約6割がイヌイットの人々です。イカルイトは、先住民であるイヌイットの文化と現代的な都市機能が混ざり合う、独特の魅力を有する街です。

歴史

イカルイトの歴史は比較的浅く、都市としての始まりは1942年にアメリカ軍が航空基地を設置したことに遡ります。それ以前は、この地域はイヌイットの人々の伝統的な野営地や漁場でした。イヌイットの人々は、この地を「たくさんの魚」を意味する「イカルイト」と呼んでいましたが、アメリカ人やカナダ人は、近くの湾の名前にちなんで「フロビッシャー・ベイ」と名付けました。

1949年にハドソン湾会社がこの地に進出すると、フロビッシャー・ベイの人口は急増しました。1950年代には、遠距離早期警戒線（DEW）基地が建設され、建設労働者や軍人などが移住してきました。また、基地が提供する雇用や医療サービスを求めて、イヌイットの人々も都市に移り住みました。1957年には、市の人口約1,200人のうち、489人がイヌイットでした。

1959年、カナダ政府はイヌイットの定住を促進するため、医師、学校、社会インフラを含む行政サービスを開始しました。1963年には、アメリカ空軍が基地を閉鎖しましたが、カナダ政府は引き続き支局を設置し、東部北極地方の行政の中心としました。1964年には市議会選挙が実施され、1979年には初の市長が誕生しました。

1987年、市名は正式にイヌイットの伝統的な名称である「イカルイト」に変更されました。1995年には、ノースウェスト準州から分割する形でヌナブト準州が設置されることが決定し、イカルイトは州都に選ばれました。1999年4月1日にヌナブト準州が正式に発足すると、イカルイトは州都としての地位を確立しました。2001年4月19日には、イカルイトは正式にカナダの市となりました。

地理

イカルイトは、北緯63度45分、西経68度31分に位置します。北極圏のすぐ南に位置し、ラブラドル海流の影響で、同じ緯度の他の地域よりも年間を通して気温が低いです。夏でも平均気温は10℃を下回り、ケッペンの気候区分ではツンドラ気候（ET）に分類されます。樹木は育たず、露天での農業は不可能です。

イカルイトの総面積は52.50平方キロメートル、人口密度は1平方キロメートルあたり約127人です。市の北西約150kmには、バフィン島で2番目に大きい湖、アングマクジュアク湖があります。この湖から流れ出す河川は、ジョーダン湖を経由してフロビッシャー湾に流れ込みます。

イカルイトの市街地は、フロビッシャー湾に存在する小さな湾に面しており、湾に沿って細長く伸びています。公共投資により、道路や住居、各種施設が整備されています。市街地は網の目状の道路で構成されています。

気候

イカルイトは、寒冷な気候のため、年間を通して気温が低く、ツンドラ気候に分類されます。夏は短く涼しく、冬は長く厳しい寒さが続きます。植物はほとんど育たず、寒さに強い草や地衣類がわずかに見られる程度です。

交通

イカルイトは、バフィン島という離島に位置するため、年間を通じて利用できる他地域への交通手段は航空機に限られます。イカルイト空港は、トロントやモントリオールなどの主要都市との便が就航しており、市の玄関口としての役割を果たしています。

夏季には、船舶による輸送も可能ですが、湾が氷結する期間は利用できません。港湾施設は簡素で、接岸用の岸壁が1つある程度です。

まとめ

イカルイトは、ヌナブト準州の州都として、イヌイット文化と現代的な都市機能が共存するユニークな都市です。その歴史、地理、気候は、他のカナダの都市とは異なる特徴を持ち、その魅力は多くの人々を惹きつけています。

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