イグラチモド

イグラチモド（Iguratimod）

イグラチモドは、慢性的な関節の炎症を引き起こす自己免疫疾患である関節リウマチの治療に用いられる経口薬です。この薬剤は日本で富山化学によって研究開発され、2012年6月に厚生労働省から製造販売の承認を取得しました。現在、エーザイ株式会社からは『ケアラム』、大正富山医薬品株式会社からは『コルベット』という製品名で販売されています。

作用機序

イグラチモドは、関節リウマチの病態に関与する免疫系に複数の経路で作用します。主な作用機序は以下の通りです。

1. B細胞への作用: 関節リウマチでは、自己の組織を攻撃する抗体（自己抗体）が産生されることが知られています。イグラチモドは、この自己抗体を主に産生するリンパ球の一種であるB細胞に直接働きかけ、免疫グロブリン（IgGやIgMなど）の過剰な産生を抑制します。
2. 単球・マクロファージへの作用: 関節の炎症には、マクロファージなどの免疫細胞が産生する炎症性サイトカインが深く関与しています。イグラチモドは、単球やマクロファージといった細胞に作用し、TNFα、インターロイキン-1β、インターロイキン-6などの主要な炎症性サイトカインの産生を抑制します。これらの作用は、細胞内のシグナル伝達経路であるNF-κB（nuclear factor-kappa B）を介していることが示唆されており、炎症反応の拡大を防ぐことで関節の破壊を抑制する効果が期待されます。

これらの作用を通じて、イグラチモドは関節リウマチにおける過剰な免疫応答と炎症反応を鎮め、病気の進行を抑制し、症状を改善に導きます。

使用上の注意

イグラチモドの使用にあたっては、特定の患者さんでは使用が禁じられています。以下に該当する場合は使用できません。

過去にイグラチモドや製剤に含まれる成分に対して過敏症を起こしたことがある方。
現在妊娠している、または妊娠している可能性のある方。
重篤な肝臓の機能障害がある方。
活動性の消化性潰瘍（胃潰瘍や十二指腸潰瘍など）がある方。
血液を固まりにくくする薬であるワルファリンを服用中の方。

上記以外にも、患者さんの状態によっては慎重な投与が必要となる場合があります。

副作用

イグラチモドの投与により、様々な副作用が現れる可能性があります。添付文書に記載されている主な副作用には以下のようなものがあります。

重大な副作用

比較的頻度は低いものの、重篤な状態に至る可能性のある副作用として報告されています。

肝機能障害、黄疸: 肝臓の働きが悪くなり、肝機能を示す数値（AST, ALTなど）の異常や、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が見られることがあります（肝機能障害: 0.49%、黄疸: 0.10%）。
汎血球減少症、白血球減少: 血液中の全ての細胞（赤血球、白血球、血小板）が減少する汎血球減少症や、特に感染防御に関わる白血球が減少することがあります（汎血球減少症: 0.10%、白血球減少: 0.10%）。
消化性潰瘍: 胃や十二指腸などに潰瘍ができることがあります（0.68%）。
間質性肺炎: 肺の組織に炎症が起こり、咳や息切れなどの症状が現れることがあります（0.29%）。
感染症: 免疫力が低下することにより、敗血症や膿胸などの重篤な感染症にかかりやすくなることがあります（0.19%）。

その他の副作用

比較的高い頻度で見られる副作用として、肝臓に関連する検査値の異常があります。10%以上の患者さんで、AST(GOT)増加、ALT(GPT)増加、Al-P増加、γ-GTP増加といった肝酵素の上昇が報告されています。これらの異常は、定期的な検査で確認することが重要です。

副作用が現れた場合は、速やかに医師または薬剤師に相談してください。定期的な診察や検査を受けることが、安全に治療を続ける上で非常に大切です。

出典

本解説は、主に製品の添付文書情報に基づいて作成されています。

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