イスハク・ベイ・クラロール

イスハク・ベイ・クラロール：ボスニア王国の王子からオスマン帝国のベイへ

イスハク・ベイ・クラロール（1449年 - 1493年以降）は、ボスニア王スティエパン・トマシュの王子として生まれました。洗礼名はシギスムンド・トマシェヴィチ。妹カタリナと共に、コトロマニッチ家の最後の人物として知られています。ボスニア王国がオスマン帝国に征服された際、捕らえられイスラム教に改宗。メフメト2世の従者となり、最終的にサンジャク＝ベイの地位まで昇進しました。

幼少期

シギスムンドは、スティエパン・トマシュとカタリナ・コサチャ＝コトロマニッチの息子として誕生。1449年に父がラグサ共和国へ王子の誕生を伝えたのは、おそらくシギスムンドのことでしょう。母方の一族はシギスムンドを次期ボスニア王に据えようとしましたが、1461年にスティエパン・トマシュが死去すると、異母兄スティエパン・トマシェヴィチが即位。母方の祖父スティエパン・ヴクチッチ・コサチャは、オスマン帝国の脅威に対抗するためには成人した王が必要だと判断し、シギスムンド擁立を取り下げました。

スティエパン・トマシェヴィチの治世中、シギスムンドは妹や母と共にフォイニツァのコゾグラド城で育てられたと言われていますが、実際には王が異母弟をヤイツェの王宮で傍近くに置いていた可能性が高いです。子がいないスティエパン・トマシェヴィチにとって、シギスムンドは推定相続人だったからです。

王国の滅亡と虜囚生活

1463年5月、オスマン帝国がボスニアに侵攻。ボスニア王族はオスマン軍の追及を逃れるため各地へ分散しましたが、シギスムンドと妹カタリナは母と別れて逃げる途中、ヤイツェに近いズヴェチャイでオスマン軍に捕らえられました。国王スティエパン・トマシェヴィチはクリュチで投降し、間もなく斬首。母后カタリナはアドリア海沿岸へ逃れましたが、息子たちの身代金を工面するため苦労しました。

1473年、シギスムンドはメフメト2世の従者としてオトゥルクベリの戦いに参加。メフメト2世の側近として仕え、食事を共にしたり、バックギャモンに興じることもありました。

1475年ごろ、母カタリナが身代金の支払いを断念したのを機に、シギスムンドはイスラム教に改宗し、イスハク・ベイ・クラロールと呼ばれるようになりました。1476年春には、従弟のマティヤ・サバンチッチがオスマン帝国支配下の傀儡ボスニア王に据えられており、彼自身もその候補として考えられていたのです。1478年10月に母カタリナが死去する直前、シギスムンドがキリスト教信仰を取り戻した場合という条件付きで、彼をボスニア王の後継者に指名する遺言を残しました。

オスマン帝国軍人として

イスハク・ベイは叔父アフメド・パシャに従い、メフメト2世とバヤズィト2世の治世下で軍人として昇進。アナトリア半島のカレスィのサンジャク＝ベイに任命されました。1485年から1491年のオスマン・マムルーク戦争では、アダナ付近で戦い、一時捕虜となるも脱走。その後も戦いに参加しましたが、味方の敗北を招いたとして裁判にかけられました。

イスハク・ベイに関する記録は、1493年9月9日のクルバヴァの戦いを最後に途絶えます。彼は、知られている限り最後のコトロマニッチ家の人物でした。

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