イスマーイール2世

イスマーイール2世：激動のサファヴィー朝を生きたシャー

イスマーイール2世（1537年5月31日 - 1577年11月24日）は、サファヴィー朝の第3代シャーとして、激動の時代を生きました。父である第2代シャー、タフマースブ1世の次男として生まれましたが、その生涯は波乱に満ちたものでした。

幽閉からシャーへ

イスマーイール2世は、オスマン帝国との戦争に従軍していた際、父の勘気を被り、約20年もの間幽閉されるという不遇の時代を過ごしました。タフマースブ1世の晩年、サファヴィー朝では後継者争いが激化。1576年5月に父が死去すると、その争いは頂点に達しました。異母弟ハイダルとイスマーイール2世がそれぞれクズルバシュ（テュルク系の軍事集団）に擁立され、対立。

しかし、事態は意外な方向へ展開します。異母妹のパーリー・ハーン・ハーヌムが首都ガズヴィーンの王宮を占拠し、ハイダルを処刑。これにより、幽閉されていたイスマーイール2世が釈放され、シャーとして即位することになったのです。

恐怖政治と謎の死

ところが、イスマーイール2世は即位後、ハーヌムを政権から排除。兄弟をはじめとする有力な王族の男子を次々と粛清し、かつてハイダルを支持したクズルバシュの重臣たちを殺戮するなど、恐怖政治を展開しました。これにより、周囲の支持を失い、孤立を深めていきます。

即位からわずか1年後の1577年11月24日、イスマーイール2世は40歳という若さで急死します。その死因については、ハーヌムによる毒殺、アヘンの過剰摂取、持病の悪化など諸説ありますが、真相は謎に包まれています。

イスマーイール2世の死後、兄であるムハンマド・ホダーバンデ（盲目であったため後継者候補から外されていた）が次のシャーに擁立されました。

イスマーイール2世の短い治世は、サファヴィー朝の歴史において、激動と混乱の時代を象徴するものとして記憶されています。

参考文献
永田雄三、羽田正 『世界の歴史15 成熟のイスラーム社会』 中央公論社、1998年。
フランシス・ロビンソン著、小名康之監修 『ムガル皇帝歴代誌』 創元社、2009年。
* デイヴィッド・ブロー著、角敦子訳 『アッバース大王 現代イランの基礎を築いた苛烈なるシャー』 中央公論新社、2012年。

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