イタカ

イタカ：クトゥルフ神話の風の邪神

イタカ（Ithaqua）は、オーガスト・ダーレスがクトゥルフ神話に導入した邪神であり、旧支配者の一柱として知られています。風を操るその異形の姿、そして犠牲者を異界へと連れ去る残酷な所業は、クトゥルフ神話における独特の存在感を放っています。本稿では、イタカの詳細な解説と、関連作品、クトゥルフ神話における位置付けについて考察します。

イタカの正体と能力

イタカは、大気を象徴する神格とされ、ハスターの眷属であるとされています。その姿は、人間に似た輪郭を持つ途方もない巨体で、顔は人間を戯画化したようであり、鮮紅色に燃え上がる二つの目と水かきのある足を持つとされています。目撃者によっては、「眼のある紫の煙と緑の雲」と表現されることもあります。

イタカは、吹雪を司り、星間宇宙を自由に歩むことができます。カナダの先住民の間では、氷雪の夜に森林地帯を徘徊し、風に乗って目にも留まらぬ速さで現れ、人間をさらって行く精霊「ウェンディゴ」として知られています。

イタカに遭遇した人間の多くは、空に巻き上げられ、生贄として地球外の遠方の地へ連れ去られます。数ヶ月に渡り、異界をさまよった後、地上へ戻される場合もありますが、その際に死亡したり、高空の冷気に身体が耐えられなくなり地上で長く生きられない体になってしまいます。犠牲者の死体には、生前所持していなかった奇怪な品々（銘板や石像など）が発見されることが多く、謎めいた存在感を際立たせています。

ウェンディゴとの関係

カナダの先住民の伝承に登場するウェンディゴは、人食いをする悪霊として知られています。アルジャーノン・ブラックウッドの小説『ウェンディゴ』では、風を擬人化した悪霊として描かれています。クトゥルフ神話においては、このウェンディゴはイタカの異名、化身、近縁種、あるいは眷属であると解釈されることが多く、両者の関連性は深く研究されています。ただし、イタカとウェンディゴの犠牲者にみられる被害には違いがある点も注意が必要です。

イタカの登場作品と、ダーレスによる創作

イタカは、オーガスト・ダーレスによって創作されました。ダーレスは、ブラックウッドの『ウェンディゴ』に影響を受けてイタカを創造し、複数の作品でイタカを登場させています。代表的な作品として、『風に乗りて歩むもの』、『イタカ』、『戸口の彼方へ』などが挙げられます。

これらの作品では、イタカは邪神ハンターにとって非常に厄介な存在として描かれています。本命の敵邪神と戦っている最中に介入し、戦況を複雑化させるためです。また、ダーレス以降、ブライアン・ラムレイなど多くの作家がイタカを題材にした作品を発表しており、クトゥルフ神話におけるイタカの存在は、ますます大きなものとなっています。

TRPG『クトゥルフの呼び声』では、ブラックウッドのウェンディゴの設定がクトゥルフ神話のイタカに統合されており、ゲームにおいても重要な役割を担っています。

まとめ

イタカは、クトゥルフ神話において風を司る強力な邪神であり、その存在は多くの作家によって掘り下げられ、解釈されてきました。ウェンディゴとの関連性、そして旧支配者達との複雑な関係性も踏まえ、イタカはクトゥルフ神話の世界観を豊かに彩る存在となっています。その謎めいた正体と、犠牲者に残された謎は、これからも多くのファンを魅了し続けることでしょう。

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